2022年9月4日日曜日

V2164動作確認

VCAチップのV2164の動作確認を行いました。


参考
実験に使用したCoolaudio製の品種です。秋月で取り扱いがあります。

オリジナルの品種です。アナログ・デバイセズの製品ということもあり詳しいです。

データシートより注意点など


各入力ピンは電源電圧が絶対定格となっているので過電圧についてはあまり気にしなくても良いと思います。

Vc(CV入力) vs Iout(出力電流)はExponential(指数)特性となっており、Linear(比例)特性ではありません。Exponential特性のVCAモジュールはDoepferなどから販売されていますが、私は使ったことがないのでどのような聴感上の違いがあるかはわかりません。自作のNJM13700を使ったVCAはLinear特性です。

データシートのアプリケーション例ではVcにGND~+5Vの電圧を与えるようになっていますが、正電圧では減衰しかできません。増幅するにはVcに負電圧を与える必要があります。

MODEピンは抵抗をつないでA級、AB級を切り替えます。SSM2164のデータシートの等価回路を見ると切り替えるというより、アイドル電流をどれぐらい流すか外付けの抵抗で設定するもののようです。

等価回路

実験用回路図

INに与えた電圧信号を、抵抗R1、R2、C1を介してIinに電流入力します。電流入力とは少し難しそうですが、トランジスタのベースへの入力なので、ベース抵抗でIBEを制限するということです。

Ioutも電流出力なので、OPアンプを使った電流電圧変換回路で電圧を取り出します。電流出力も要はオープンコレクタなので抵抗1本をV+につないで変換しても良いのですが、基準点がGNDにならなかったり直線性が悪化する場合があるので、OPアンプのIV変換回路を使います。

ブレッドボード配線

実験の様子

入出力信号の観測


電源電圧:±12V

INに500Hz/1Vp-pのサイン波、CVに10Hzノコギリ波を入力して、CVをちょうど良さそうな振幅に設定しました。


C1:CV C2:OUT

直線的なCV(黄色)に対して、出力(青)の振幅は指数関数的になっています。またCVに対して出力振幅が反転しています。CV入力に反転増幅回路や反転加算回路を入れれば良さそうです。

CVが0Vのとき、出力の振幅が0になるわけではなく、プラス側のCVを与えないと「無音」状態が得られないことがわかります。

指数特性なので出力を完全に0にすることはできませんが、耳に聞こえないぐらい小さな振幅(例えばノイズフロア以下)になるように、CVに正のバイアスを与えればよさそうです。

入力信号を2Vp-pに大きくしてみます。


C1:CV C2:OUT

入力信号を大きくしてみると±12V付近でクリップするようです。電源電圧が±12Vなので最大出力振幅は大きく取れそうです。

出力がクリップする条件


入力信号を2Vp-p/1Vp-pで比較。それぞれCVを調整し、出力がクリップする様子を観測。

入力信号:2kHz 1Vp-p サイン波
CV信号:DC -800mV

C1:CV C2:OUT

INが1Vp-pの場合、CV=-800mVではクリップしません。

入力信号:2kHz 1Vp-p サイン波
CV信号:DC -900mV

C1:CV C2:OUT

INが1Vp-pの場合、CV=-900mVでクリップします。


入力信号:2kHz 2Vp-p サイン波
CV信号:DC -600mV

C1:CV C2:OUT

INが2Vp-pの場合、CV=-600mVではクリップしません。

入力信号:2kHz 2Vp-p サイン波
CV信号:DC -700mV

C1:CV C2:OUT

INが2Vp-pの場合、CV=-700mVでクリップします。

Vin、CVにかかわらず出力振幅が電源電圧の±12V付近でクリップするようです。ただし、マイナス側はやや小さく-11V付近。

出力が0になる条件


入力信号:2kHz 1Vp-p サイン波
CV信号:DC 0V

C1:CV C2:OUT

INが1Vp-pの場合、CV=0Vでは約1Vp-pサイン波が出力されています。

入力信号:2kHz 1Vp-p サイン波
CV信号:DC 1.3V

C1:CV C2:OUT

INが1Vp-pの場合、CV=+1.3Vでは出力はほぼ0です。


入力信号:2kHz 2Vp-p サイン波
CV信号:DC 0V

C1:CV C2:OUT

INが1Vp-pの場合、CV=0Vでは約2Vp-pサイン波が出力されています。CV=0Vの場合利得が1になるようです。

入力信号:2kHz 2Vp-p サイン波
CV信号:DC 1.3V

C1:CV C2:OUT

CV=0Vで利得1、CV=+1.3V付近で十分振幅が小さくなるようですが、トリムを使ってバイアスを調整できるようにするのが良さそうです。

Exponential特性


CVを三角波にしてExponential特性の様子を観測しました。

入力信号:2kHz 1Vp-p サイン波
CV信号:1.1Vp-p Offset+300mV 三角波

C1:CV C2:OUT

入力信号:5kHz 1Vp-p サイン波
CV信号:1.1Vp-p Offset+300mV 三角波

C1:CV C2:OUT

上昇時、下降時ともExponential特性、CVに対して反転出力となっています。