2022年7月26日火曜日

AnVCO トランジスタの熱結合で銅箔テープを巻く効果(絶大?)

AnVCOを2台製作しました。指数関数回路のトランジスタ対を熱結合していますが、1台目は単にエポキシ接着剤で固定、2台目は銅箔テープで巻いたあとエポキシ接着剤で固定しています。

AnVCO1の熱結合 (エポキシのみ)

AnVCO2の熱結合 (銅箔テープ+エポキシ)

銅は熱伝導率が良いため銅箔テープで巻くと結合度が上がることが期待できます。

実験


ドライヤーで熱風を当てて温度を上げて出力波形の周波数がどのように変化するか測定しました。

実験のようす

室温(27.8℃~28.0℃)で2台のAnVCOを220Hzのノコギリ波が出力されるように調整し、ドライヤーで熱風を120秒間当て、トランジスタ対の表面温度と出力信号の周波数を測定しました。

温度は自作のサーミスタ温度計でロギングし、周波数はテスタ(OWON B35)でロギングしました。

サーミスタはポリイミドテープでトランジスタ対の熱風が当たる逆側に貼り付けました。


また波形に変化があるか見るために、出力をオーディオインターフェイス(Behringer UMC404HD)に入力しWaveSpectraで録音しました。

時系列


時系列を横軸に取り、表面温度と出力信号の周波数をプロットしました。温度のデータと周波数のデータは同期していないため、ドライヤーのスイッチを入れ値が急に変わるところで合わせました。同じタイミングで値が急に変わることは実験時に目視して確認しています。横軸の目盛りの単位は秒です。

AnVCO1 (エポキシのみ)

AnVCO2 (銅箔テープ+エポキシ)

銅箔テープで巻いたAnVCO2の方が元の周波数220Hz付近に戻るのが速くなっています。周波数の低下もAnVCO2の方が小さくなっています。

また、温度が上昇すると周波数が低下しますが、温度と周波数が比例しているわけでなく、急激に温度上昇した場合に大きく周波数が低下し、温度変化が少なくなると高温時でも周波数は220Hz付近に復帰しています。

表面温度 VS 周波数


表面温度軸と周波数軸でプロットしました。

AnVCO1 (エポキシのみ)

AnVCO2 (銅箔テープ+エポキシ)

銅箔テープで巻いたVCO2の方が温度に対して周波数が安定しています。温度上昇時からの復帰が速いですね。また、温度と周波数が1対1対応しているわけではないことがわかります。

以上、まとめると、トランジスタ対を熱結合するときは銅箔テープで巻いた方が周波数安定度が向上すると言えそうです。

出力波形


録音した信号の波形ですが、温度が上昇しても波形の乱れは見られませんでした。

AnVCO2:周波数が下がった状態

メモ:


OWON B35は以前使っていたスマホHUAWEI P8 Liteでは専用アプリでBluetooth接続できますが、最近の端末(Google Pixel 3aやiPad Air2)では接続できません。Bluetoothのバージョンによるものだと思います。今回は退役したP8 Liteを使ってロギングしました。True RMSタイプのOWON B35TはBluetoothのバージョンが上なので新しい端末でも通信可能かも知れません。

2022年7月13日水曜日

KORG SQ-64 ファースト・インプレッション

KORG SQ-64というステップシーケンサーを購入しました。SQ-1を持っていますがこちらは最大16ステップ、2トラック出力にすると最大8ステップになります。SQ-64は外観で分かる通り最大64ステップまで利用できます。


また、パターンという概念があり最大64ステップのシーケンスを最大16パターン保持して切り替えて演奏可能です。パターンモードに入ると64ボタンがパターン切り替えボタンとして動作します。

さらにGATE、PITCH、MODが可変なA、B、Cの3つのトラックと、リズム系のGATEのみのDトラックがあり、Dトラックは16チャンネル(物理的なGATE出力は8チャンネル)利用できます。

もう一つ上にProjectという概念があり64個記憶させておくことができます。

つまり、まるでPCのシーケンサーのように扱えるということです。PCのシーケンサーと異なりMIDI出力ではなく直接GATE/CVを出力できます。MIDIの最大128段階の制約を受けず、面倒なMIDI-CV変換も不要です。

ただ良くない点もあります。マニュアルが簡素すぎて初見ではまず詳しい使い方がわかりません。1週間程度触ってみてわかったことを以下記します。

STEP数


GATEボタンを押すとディスプレイにSTEPパラメータが現れ、トラック全体のSTEP数を設定できます。また、A、B、C、Dのトラックボタンを押すとトラックごとに別々にステップ数を設定できます。

トラックごとに個別のステップ数を設定すると、A、B、C、Dのいずれのボタンも点灯していないとき(全トラックが対象になっている)、ディスプレイのSTEPが-xx~+xxと各トラックに対する相対的な設定に変わります。

このとき、どこかのトラックが中途半端な設定になっていると、例えば他が16ステップなのに一個だけ17ステップになっている場合など、シーケンスがRESYNCされて気持ち悪い感じになります。

TIEとSLIDE


GATEボタンを押しながら64ボタンを押すとそのステップがTIEされます。TIEされると2ステップのGATEが連続します。

TIEされていない場合の出力信号

CH:CV CH2:GATE

CVはC4、C5の繰り返しです。

TIEされた場合出力信号

CH:CV CH2:GATE

2つのステップのGATEが結合されています。GATEがHighのあいだにCVが変化します。

64ボタンを押しながらLENGTHつまみを上げていってもTIEされます。TIEからさらにLENGTHつまみを上げていくとSLIDEになります。SLIDEされるとCVがなめらかに補完されます。

SLIDEの%でCVが補間される長さが変化します。ディスプレイのSLIDEの設定で、補間カーブを直線、対数、指数に設定できます。

SLIDE=50% LINIER

SLIDE=50% LOG

SLIDE=50% EXP

PITCH


PITCHボタンを押しながら64ボタンを押すとそのSTEPのPITCHを変更できます。PITCHボタンを押しながら64ボタンを複数個押すと、まとめて複数のSTEPを同じPITCHに設定できます。

MOD


MODはPITCHとは別の制御電圧を出力することができます。

MODモードに入るとディスプレイにCURVEというパラメータが現れます。これはGATEのLENGTHでTIE以上のSLIDEにすると効果が出ます。出力値が階段状ではなくなめらかに変化します。


CH1:MOD CH2:CV

CVがSLIDEされている区間でMODがなめらかに変化します。

ただし、値を設定できるのがSTEPごとなので鍵盤のVelocityと同じような扱いになると思います。ピッチホイールやモジュレーションホイールのようなSTEP(音符)に縛られないモジュレーションは難しいかもしれません。

USB MIDI


CV/GATEを出力しつつ、USB-MIDI経由でソフト音源をコントロールできます。つまりハードウェア音源とソフトウェア音源を簡単に同期できます。Ableton Liveで使ってみたところソフト音源をDAW側のシーケンスで演奏することもSQ-64側のシーケンスで演奏することもできるようです。