2022年3月26日土曜日

4次VCF V3320(CEM3320互換)の動作確認

CoolAudioのV3320Mの動作テストしました。


パッケージは18PinのSOPです。DIP変換基板で18Pinのものがあまり出回っていないので、20Pinのものを使用しました。

実験に使った回路図

V3320のデータシートの回路例はRCネットワークがどうなっているかわかりやすいと思います。ICの端子順がバラバラなので配線には注意が必要。

V3320のデータシートから注意点をまとめます。


VSS(Pin13)の絶対定格は–4~+0.5Vです。IC内部でVSSに-1.9Vのレギュレーターが入っているので-12Vを使う場合はVSSに電流制限抵抗を入れます。
REE = (Vss - 2.7V) / 0.008 = (12 - 2.7) / 0.008 ≒ 1162Ω
実験では回路例と同じ1.5kΩを使いました。

FREQ CV(Pin12)の絶対定格は-6V~+6Vとなっています。FREQ CV(12Pin)の入力は100kΩと1.8kΩの抵抗で分圧されていて0.018倍されるので、それほど気を使う必要はありません。

RESONACE CV(Pin9)の絶対定格は-18V~+2Vとなっています。RESONANCE CV(Pin9)は電流入力であり、100kΩの電圧電流変換抵抗を入れているので+2V以上でも問題ありません。電圧電流変換抵抗により電圧降下します。

ゲインやカットオフ周波数の可変域は、帰還抵抗とコンデンサの値によって決まります(式はデータシートのFunctional Description / 2. Operation of Each Filter stage参照)。回路例から値を変更するとカットオフ周波数がずれます。300pFのコンデンサの手持ちがないので330pFを使用しましたが、誤差10%と考えれば大きな問題ではないと思います。

バッファの出力負荷は、最大推奨DC負荷はソース1mA、シンク250uA、バッファ間負荷差150uA。A.C.負荷の最大推奨値は±250uAとなっています。抵抗の値も回路例どおりにしておくのが無難です。相場感としては、12V / 100kΩ = 120uA、電流は電圧に比例、抵抗に反比例です。

ブレッドボード配線

実験のようす

電源電圧は±12V。

FREQ CVは(固定)抵抗とPOTの分圧で作りました。[33kΩ] - [50kΩ/可変] - [33kΩ]で+12V、-12V間につなぐと-5V~+5Vが得られる計算ですが、Pin12の入力インピーダンスにより-4.12V~+4.15Vまでしか設定できませんでした。

出力波形


1kHz/4Vppの矩形波を入力し、周波数制御電圧(FREQ CV)とレゾナンス制御電圧(RES CV)を変化させてフィルタのステップ応答を観測しました。

FREQ CV=0V RES CV=-2V

FREQ CV=0V RES CV=-1V

RES CVは-1V以下ではレゾナンスの変化なし。

FREQ CV=0V RES CV=0V

RES CV=0Vでは1次LPFのような応答。

FREQ CV=0V RES CV=+1V

FREQ CV=0V RES CV=+2V

FREQ CV=0V RES CV=+3V

FREQ CV=0V RES CV=+4V

RES CVを大きくしていくと振動が増えます。さらに大きくすれば自己発振するかも知れません。

FREQ CV=-4V RES CV=0V

FREQ CV=+4V RES CV=0V

FREQ CVは入力電圧が小さい方がカットオフ周波数が高くなります。

周波数特性

周波数制御電圧(FREQ CV)とレゾナンス制御電圧(RES CV)を変化させてフィルタの周波数特性を測定しました。

FREQ CV=-4V RES CV=0V

FREQ CV=0V RES CV=0V

FREQ CV=0V RES CV=3V

RES CVを高くするとカットオフ周波数のQが上がります。

端子電位


周波数制御電圧(FREQ CV)とレゾナンス制御電圧(RES CV)を入力したときの端子電位を測定しました。

FREQ CV(V) Pin12(mV)
-4.12 -72.7
0 0
4.15 71.2

RES CV(V) Pin9(mV)
-2 -1973
-1 -983
0 -127.7
1 44
2 114.1
3 156.4
4 187.5
5 212.7


参考

V3320の中身は4つの可変ゲインセルとバッファ、指数関数回路なので外付けのRCネットワークによりいろいろなフィルタが作れます。その分使いこなすにはデータシート他資料を読んで理解する必要があります。

動作の詳細やLPF以外にHPF、BPF、All Pass Filterの回路図が載っています。

オリジナルのデータシートも詳細です。状態変数フィルタ(SVF)の回路図もあります。

Sequential Pro-OneやOberheim OB-XaなどのVCFの構成についての記述もあります。


V3320について詳細に分析されています。

2022年3月22日火曜日

VCOモジュール AnVCOの製作 その5 仕上げ

パネル取り付け




ポリカーボネートを加工したパネルに取り付けました。穴あけにはアクリル専用ドリルビットを利用しています。ポリカーボネートでもバリがあまり出ず、鉄工用ドリルよりきれいに穿孔できます。割れてしまう心配も少ないです。穴径の調整には樹脂用リーマを使用。

アクリルドリルビット(アクリサンデー)と樹脂用リーマ(エーモン)

加工したポリカーボネート板(参考)

基板に取り付けたPOTの径はM7ですが、パネルはΦ8で穴を開けています。ピッタリのΦ7だと複数あるPOTの取付誤差や穴あけの誤差によりうまくはまらないことが多く、経験的にΦ8がおすすめです。

ロータリースイッチはAliExpressで販売されている基板取り付け型のものを使いました。小型で非常に安価です。5極のものは端子順が少々変則的なので「ジャック/プラグのピンアウト」に記載しました。


熱結合


指数変換回路のトランジスタペアと温度補償抵抗を熱結合しました。私は熱結合にコニシクイック5というエポキシ接着剤を使っています。硬化時間により種類がありますが、クイック5はある程度粘性があり、盛ったときに垂れてしまわないのでちょうど良いと思います。

調律後の出力周波数


CVに0V~+5Vの電圧を入力し出力周波数と制御電流を測定しました。制御電流は回路図Page2のJP2(TP_I_SINK)の端子間に流れる電流を測定しました。電流出力回路なのでテスタの内部インピーダンスによる影響は少ないですが、測定中は出力周波数が多少狂うので別々に測定しています。Coarse=3。



CV(V) OUT(Hz) Isink(uA)
0 110 5
0.5 156
1 220 10
1.5 311
2 440 20
2.5 622
3 880 39.9
3.5 1245
4 1759 79.9
4.5 2484
5 3510 159.8

オクターブ切り替えスイッチ


オクターブを切り替えて出力周波数を測定しました。CV=1V。

Coarse Out(Hz)
1 55
2 110
3 220
4 439
5 874

オクターブ切り替えは高域になると多少ズレるようです。

2022年3月21日月曜日

VCOモジュール AnVCOの製作 その4 波形変換回路

基板全体のはんだ付けが終わったところ

ノコギリ波→三角波変換回路


回路図 Page4

実質NPNトランジスタ一発の回路ですが、これでノコギリ波を三角波に変換できます。RV8 (Shape)を回して、三角波の頂点のズレがなくなるように調整します。

頂点がずれている COARSE=3 CV=+1V

頂点が重なり三角波に COUASE=3 CV=+1V

ノコギリ波→矩形波変換回路


回路図 Page5

U5Bをコンパレータとして使ってノコギリ波を矩形波に変換します。閾値を変化させることによってパルス幅可変としています。

PW(パルス幅)の閾値を設定するR40、R43はC&Tで決めました。ともに47kΩにするとPW=15%~85%程度に設定できます。矩形波変換回路は、特に調整するところはありません。

PW=Min COUASE=3 CV=+1V


PW=Max COARSE=3 CV=+1V

メモ


三角波変換回路(Page4)の初段のボルテージフォロアは冗長。

ノコギリ波変換回路(Page5)の終段のボルテージフォロアは冗長。
PW(RV10)の端子順が逆。

参考



2022年3月20日日曜日

VCOモジュール AnVCOの製作 その3 ノコギリ波発生回路

ノコギリ波発生回路


ノコギリ波発生回路まではんだ付けしたところ

回路図 Page3

Page3がノコギリ波発生回路です。Q3がオフのときは、定電流源のI_SINKより電流が流れ出しC8に電荷が蓄えられます。
Q = it
なので、電流iが一定なら電荷Qは時間tに比例します。また、
Q = CV
V = Q / C
なので電圧Vは電荷Qに比例します。したがって、電流iが一定ならば電圧Vは時間tに比例し、C8の下側の電位は時間とともに直線的に低下していきます。

U2Aのコンパレータが閾値を超えるとQ3をオンにしてC8から急峻に電荷を抜き、C8の下側の電位は+5Vに戻ります。

U2Bは出力振幅が-5V~+5Vとなるようにするアンプです。バッファとしての役割も兼ねています。

C8は安定性が求められるのでポリプロピレンを使いまいした。他の素材のフィルムコンデンサに比べると大型になりますが、0.01uF程度ならいずれも小型です。

回路図に誤りがあり、SyncInが使えません。R23、J10のSyncinは実装していません。

ノコギリ波発生回路の調整


調整のようす

ノコギリ波のみとなりますが、実際に波形を出力できるので調律を行います。今回はCOARSE_SWが3(真ん中)、CVが+1Vのとき220Hzとなるようにしました。

FINE(RV2)を中点に合わせ、COARSE_SW(J8)のPIN3とPIN6(COM)を短絡しておきます。

CVに+1Vを入力。
出力が220HzとなるようにINPUT_ADJ(RV3)を回す。※INPUT_ADJ低い場合発振しない。
CVに0Vを入力
出力が110HzとなるようにSCALE(RV4)を回す。

CVに+3Vを入力。
出力が880HzとなるようにRV7を回す。

CVに+1Vを入力。
COARSE_SWの接続を切り替えて55Hz、110Hz、220Hz…となるようにRV1を回す。

CV=+1V → 220Hz

CV=0V → 110Hz

CV=+3V → 880Hz

メモ


SincInの回路図が間違っているので修正する。SyncInはU2Aの反転端子に接続。コンパレータの閾値電位を変化させるもの。

LineFMは指数変換回路に含める。

参考



2022年3月18日金曜日

VCOモジュール AnVCOの製作 その2 指数変換回路

指数変換回路


指数変換回路まではんだ付けしたところ

回路図 Page2

Page2が指数変換回路で、1Vの電圧差が2倍の電流値となるように、入力されたCV値を指数変換して出力する回路です。I_SINKが電流出力のポイントでこの回路に向かって電流が流れます。

Page2の(A)の部分とPage3のR27をはんだ付けします。(B)、(C)の部分はCVを変調するものなので後回しにします。

Q1、Q2はVBEがマッチングしたものを使用します。(参考:「トランジスタ選別」) R18は3300ppmの温度補償抵抗を用います。

Q1、Q2、R18は熱結合します。エポキシ接着剤(コニシクイック5など)などで固めますが、熱結合しなくても動作確認はできるので全体のはんだ付けが終わってからで良いと思います。

JP2(TP_I_SINK)は電流を測定するためのジャンパで、実際に動かすときはジャンパピンで短絡します。ここまででアンチログ回路の動作確認しておきます。

回路図のように、TP_I_SINKを開放し「TP_+12V」→「1kΩの抵抗」→「TP_I_SINK:Pin2」となるように配線してTP_I_SINK:Pin2の電位を測定します。

測定のようす

※画面からは切れていますが、ICクリップで1kΩの抵抗をつないでいます。

J1(CV)にノコギリ波を入力しRV3(INPUT_ADJ)を回していくとTP_I_SINK:Pin2に次のような波形が現れるのを確認できます。


C1:TP_I_SINK C2:CV入力

逆向きの指数カーブが得られればOKです。正確な調律はノコギリ波発生回路をはんだ付けしてから行います。

CV変調回路

(B)の部分は1オクターブごとに音程を切り替えるスイッチです。「ADJ 4V->」とあるポイントが+4VになるようにRV1を調整しておきます。1V刻みの電圧値がCVに加えられます。

(C)の部分はCV変調入力のレベルを設定するものです。J9(MOD1、MOD2)に信号を入れてI_SINKの指数カーブが変化することを確認します。

オクターブ切り替えスイッチ


反転加算回路に入力する前でもきっちり1V刻みで設定できますが、反転加算回路の入力インピーダンスがR15の470kΩであるため電圧降下します。このためノコギリ波発生回路の出力信号の周波数を測定しながらRV1を調整する必要があります。

また、入力インピーダンスの影響を少なくするには、分圧用の抵抗(R12~R16など)の抵抗値を小さくしたり、バッファを入れるなどすると良いと思います。

1kΩで分圧しているところを100Ωで分圧するように変更した場合、分圧回路に流れる電流は次の通りになります。

I = V / R = 12V / 1.2kΩ = 10mA

この電流は無駄に消費されることになります。バッファとしてNJM072Dを使うと消費電流は3mA程度です。

メモ:

機能的に考えると、Page3の+5V電源とLinerFMはアンチログ回路に含めるべき。

R15とR22のシルクのリファレンス名が逆。

RV1(オクターブ切り替えスイッチ調整用)の端子順が逆。

TP_1(TP_CV)は反転加算回路のサミングポイントで必ず0Vになるので不要。TP_2も反転増幅回路の仮想GNDなので不要。

指数変換回路のVREFは+5Vなので、電源のテストポイントはTP_+12VではなくTP_+5Vを設けてテストした方がよい。ついでなので負電源のテストポイント(TP_-12V)も設ける?

FINEつまみの可変域は、COARSEつまみ3の位置、CV=0V(220Hz)で、-0.809V~+0.686V、127.8Hz~362.3Hzとなった。-1オクターブ~+1オクターブにしたいので再考。

トランジスタの熱結合はエポキシで固める前に銅箔テープで巻いておくと良いそうです。トランジスタのパッケージをダイぎりぎりまで削り込んでやるとさらに結合度が上がります。


2022年3月14日月曜日

VCOモジュール AnVCOの製作 その1 電源回路

analog2.0を参考にして、VCOに必要な回路を個別に製作してきました。


これらを1枚の基板にまとめたVCOモジュールを製作します。

回路図


回路規模がそこそこ大きいのでKiCAD 5の階層機能を利用しました。製作途中にいくつか問題点を見つけたので、順次記します。

最上位層(電源回路含む) Page1

指数変換回路 Page2

ノコギリ波発生回路 Page3

ノコギリ波→三角波変換回路 Page4

ノコギリ波→矩形波変換回路 Page5

プリント基板


製造はfusionPCBに依頼しました。100mm×100mmを超えると製造費がかなり高くなるので100mm×100mmギリギリに収めています。

電源回路


機能ごとに回路が分かれているので順を追ってはんだ付けしました。最初は電源回路です。


回路図 Page1

①の部分が電源回路です。EuroRackの電源コネクタ(16Pin)を接続し以下の項目をチェックします。

  • LED(赤、青、緑)が点灯するか。
  • TP3の電位が+12V程度か。
  • 各OPアンプの電源端子が+12V、-12Vになっているか。

次回以降に続きます。