2022年4月13日水曜日

ノイズジェネレーター NOS02 Ver.1.1の製作 フィルター特性

アクリルパネルに取り付けたところ


ホワイトノイズにフィルタを掛けてノイズのカラーを作ります。4種類のフィルタを用意しました。

Brown: 1次LPF (-6dB/Oct)
Pink:  1次LPF + RC直列 (-3dB/Oct)
Blue1: 1次HPF (-6dB/Oct)
Blue2: 2次HPF (-12dB/Oct)

今までにも何度か書いていますが、ピンクノイズ、ブルーノイズは-3dB/Octの減衰特性を持ちます。一次RCフィルタは-6dB/Octなので帰還ループにRCを直列にしたものを入れて、周波数特性に平坦な部分を追加します。

C単体とRC直列、それらを並列にした場合に流れる電流をシミュレーションしてみます。


I(C1):C単体 I(R1):RC直列 I(V1)C-RC並列

C単体(緑の線)とRC直列(赤の線)を並列にすると周波数特性に平坦な部分ができるのがわかります(シアンの線)。このRC直列を(適宜定数を決めて)増やしていくと、よりリニアな-3dBの減衰を得られます。

しかし、どういう式を立てて解けば良いかは私にはわからないので、まじめにやるには先輩方の回路に習うのがよいと思います。

参考

NOS02ではPink NoiseはRC直列を1段入れ、Blue NoiseはRC直列を入れずに1次HPFの-6dB/Octのままにしています。Blue2は1次HPFを2段重ねた2次HPFです。カラードノイズの定義からは外れてしまいますが、明るい(シュッとした)ノイズ、暗い(柔らかい)ノイズぐらいの感覚で使えればと思います。

フィルターの周波数特性


回路図

ノイズ発生回路は切り離し、J2を入力として各フィルターの周波数特性を測定しました。

Brown

Pink

Blue1

Blue2

出力されるノイズの特性


WaveSpectraで出力波形と周波数特性を観測しました。回路はType1、Trは2SC1815です。

Brown

Pink

White

Blue1

Blue2

-3dB/OctのBlueノイズ


Pinkノイズと同じように反転型一次HPFにRC直列回路を追加すると擬似的に-3dB/Octの傾きを持ったHPFが作れます。

シミュレーション回路図

AC解析

メモ


RC1次LPFと非反転増幅回路の組み合わせは、入力部分で直流的に接地されないため電位が怪しい感じです。1MΩとかで接地しても良いのですが、反転入力型アクティブフィルタで統一したほうが良いかも知れません。

2022年4月6日水曜日

ノイズジェネレーター NOS02 Ver.1.1の製作 トランジスタの品種による違い

Ver.1.0を作った結果が芳しくなかったので、ノイズ発生回路を見直してVer.1.1として製作しました。


参考

回路図

J2より左側がホワイトノイズ発生回路です。ホワイトノイズ発生回路は2種試せるようにしていて、上側のQ1(またはQ2)、Q3で構成される回路と、下側のQ4(またはQ5)、Q6で構成される回路をSW1で切り替えます。それぞれトランジスタの端子順がECBとCBE(またはEBC)のものを排他的に利用できるようにしています。

U2Bの非反転増幅回路で出力レベルを適宜増幅します。

J2より右はフィルタ回路でノイズにカラーを与えるものです。詳しくは次回に。

回路とトランジスタの品種による違い


上側のホワイトノイズ発生回路をType1、下側をType2とします。トランジスタは2SC1815、2N2904、BC547L(後継品)を差し替えて比較しました。

出力レベルを調節するトリムBV1の回転位置を変えずに比較しました。

電源: ±12V (自作安定化電源)

出力波形


Type1 2SC1815

Type1 2N3904

Type1 BC547L

2SC1815は2N3904に比べて大きな波が少なく、BC547Lは右肩下がりの曲線が目立ちます。

Type2 2SC1815

Type2 2N3904

Type2 BC547L

Type2は逆に右肩上がりの曲線が現れます。2SC1815の振幅が小さく、BC547Lは曲線が顕著です。

スペクトラム


Type1 2SC1815

Type1 2N3904

Type1 BC547L

Type1のスペクトルの平坦さは2SC1815 > 2N3904 > BC547Lです。

Type2 2SC1815

Type2 2N3904

Type2 BC547L

Type2のスペクトルの平坦さも2SC1815 > 2N3904 > BC547Lです。Type1に比べると出力レベルは少し大きくなっています。

Type2の問題


安定化電源ではなくERK01のPSUから電源を取ったっ場合、Type2の回路はVCOの出力が重畳することがわかりました。

Analog Discovery 2では確認できませんでしたが、オーディオインターフェイス+WaveSpectraで観察するとピークが現れます。耳でもはっきり聞こえます。

Type1 2SC1815

Type2 2SC1815

Type2では60Hzと170Hz付近にピークがあります。VCOの周波数を変えると170Hzのピークが追従して動きます。おそらく電源経由で混入しているものだと思います。また60HzのピークはVCOの周波数と無関係なので商用電源由来のものでしょう。

回路図のC19は+12V電源からノイズを発生させるQ5のコレクタに接続されています。0.1uFの170Hzでのリアクタンスは約9.4kΩなので、コレクタ抵抗R14の680kΩと比較してかなり小さな値となります。電源に混入した信号の交流成分がC19を通過し、後段のトランジスタQ6とOPアンプU2Bの増幅回路で増幅された結果かも知れません。

メモ


U2Bの増幅率を設定するRV1の端子順が逆。可変抵抗の端子順はいつも間違えてしまいます。

トランジスタの個体差により、エミッタ接地回路の増幅率や発生するノイズの特性が異なる可能性はあります。

最終的には音として聴いたときにどうなるかですが、ホワイトノイズとしての特性が良いかどうかも測定してみたいと思っています。出力電圧の分布を見れば良い?

東芝製の2SC1815は入手難です。後継品の2SC1815Lは手持ちがないのでいずれ試してみるつもりです。

2022年3月26日土曜日

4次VCF V3320(CEM3320互換)の動作確認

CoolAudioのV3320Mの動作テストしました。


パッケージは18PinのSOPです。DIP変換基板で18Pinのものがあまり出回っていないので、20Pinのものを使用しました。

実験に使った回路図

V3320のデータシートの回路例はRCネットワークがどうなっているかわかりやすいと思います。ICの端子順がバラバラなので配線には注意が必要。

V3320のデータシートから注意点をまとめます。


VSS(Pin13)の絶対定格は–4~+0.5Vです。IC内部でVSSに-1.9Vのレギュレーターが入っているので-12Vを使う場合はVSSに電流制限抵抗を入れます。
REE = (Vss - 2.7V) / 0.008 = (12 - 2.7) / 0.008 ≒ 1162Ω
実験では回路例と同じ1.5kΩを使いました。

FREQ CV(Pin12)の絶対定格は-6V~+6Vとなっています。FREQ CV(12Pin)の入力は100kΩと1.8kΩの抵抗で分圧されていて0.018倍されるので、それほど気を使う必要はありません。

RESONACE CV(Pin9)の絶対定格は-18V~+2Vとなっています。RESONANCE CV(Pin9)は電流入力であり、100kΩの電圧電流変換抵抗を入れているので+2V以上でも問題ありません。電圧電流変換抵抗により電圧降下します。

ゲインやカットオフ周波数の可変域は、帰還抵抗とコンデンサの値によって決まります(式はデータシートのFunctional Description / 2. Operation of Each Filter stage参照)。回路例から値を変更するとカットオフ周波数がずれます。300pFのコンデンサの手持ちがないので330pFを使用しましたが、誤差10%と考えれば大きな問題ではないと思います。

バッファの出力負荷は、最大推奨DC負荷はソース1mA、シンク250uA、バッファ間負荷差150uA。A.C.負荷の最大推奨値は±250uAとなっています。抵抗の値も回路例どおりにしておくのが無難です。相場感としては、12V / 100kΩ = 120uA、電流は電圧に比例、抵抗に反比例です。

ブレッドボード配線

実験のようす

電源電圧は±12V。

FREQ CVは(固定)抵抗とPOTの分圧で作りました。[33kΩ] - [50kΩ/可変] - [33kΩ]で+12V、-12V間につなぐと-5V~+5Vが得られる計算ですが、Pin12の入力インピーダンスにより-4.12V~+4.15Vまでしか設定できませんでした。

出力波形


1kHz/4Vppの矩形波を入力し、周波数制御電圧(FREQ CV)とレゾナンス制御電圧(RES CV)を変化させてフィルタのステップ応答を観測しました。

FREQ CV=0V RES CV=-2V

FREQ CV=0V RES CV=-1V

RES CVは-1V以下ではレゾナンスの変化なし。

FREQ CV=0V RES CV=0V

RES CV=0Vでは1次LPFのような応答。

FREQ CV=0V RES CV=+1V

FREQ CV=0V RES CV=+2V

FREQ CV=0V RES CV=+3V

FREQ CV=0V RES CV=+4V

RES CVを大きくしていくと振動が増えます。さらに大きくすれば自己発振するかも知れません。

FREQ CV=-4V RES CV=0V

FREQ CV=+4V RES CV=0V

FREQ CVは入力電圧が小さい方がカットオフ周波数が高くなります。

周波数特性

周波数制御電圧(FREQ CV)とレゾナンス制御電圧(RES CV)を変化させてフィルタの周波数特性を測定しました。

FREQ CV=-4V RES CV=0V

FREQ CV=0V RES CV=0V

FREQ CV=0V RES CV=3V

RES CVを高くするとカットオフ周波数のQが上がります。

端子電位


周波数制御電圧(FREQ CV)とレゾナンス制御電圧(RES CV)を入力したときの端子電位を測定しました。

FREQ CV(V) Pin12(mV)
-4.12 -72.7
0 0
4.15 71.2

RES CV(V) Pin9(mV)
-2 -1973
-1 -983
0 -127.7
1 44
2 114.1
3 156.4
4 187.5
5 212.7


参考

V3320の中身は4つの可変ゲインセルとバッファ、指数関数回路なので外付けのRCネットワークによりいろいろなフィルタが作れます。その分使いこなすにはデータシート他資料を読んで理解する必要があります。

動作の詳細やLPF以外にHPF、BPF、All Pass Filterの回路図が載っています。

オリジナルのデータシートも詳細です。状態変数フィルタ(SVF)の回路図もあります。

Sequential Pro-OneやOberheim OB-XaなどのVCFの構成についての記述もあります。


V3320について詳細に分析されています。