2017年10月6日金曜日

Tr回路の実験 エミッタ接地回路

「定本 トランジスタ回路の設計」を読み返して一通り読み終わったが、読んだだけでは身にならないのでLTSpiceでシミュレーションしつつ、ブレッドボードで実際に回路を組んで動作を確認してみようと思います。

本に載っている回路をそのまま実験するのもつまらないので、この間作ったAD9833ファンクションジェネレーターの出力増幅アンプとして使うことを想定しつつやってみようと思います。

AD9833ファンクションジェネレーターの仕様により

入力波形: サイン波、三角波(0.65Vp-pの単電源波形)
電源電圧: +9V(ただし電池電源で安定化していない)

ぐらいを要件とします。

バイアスのかけ方


「定本 トランジスタ回路の設計」のエミッタ接地回路では、抵抗の分圧によってエミッタ接地回路のベースバイアスをかけているが、その他にもいろいろな方法がある。「Electronics Tutorials」や「nteku.com」にいくつか紹介されている。

固定バイアス(Fixed Base Bias)

自己バイアス(Collector Feedback Bias)

など。Feedback(負帰還)は冒頭から説明するとややこしくなるので、第一章では、あえて取り上げられていないのだと思う。

これらのバイアスのかけ方は抵抗の本数が少なくてすむが、Trのβ(hFE)によって回路の増幅率が決まる。例えば2SC1815のhFEはYランクで120以上あり、個体によってもかなりばらつきがある。微小信号や高周波などで限界まで増幅したい場合などは有効かも知れないが、オーディオ信号を増幅するには少々使いにくい。

抵抗分圧でバイアスポイントを決める回路だとhFEによらず抵抗値で増幅率をきめられるのがメリット。

エミッタ接地回路をLTSpiceでシミュレーション


シミュレーション回路図

電源電圧VCCは9Vとした。

Q1はどこかでとってきた2SC1815のパラメータを「<..>/LTC/LTspiceIV/lib/cmp/standard.bjt」に追記して利用している。←多分CQ出版の「電子回路シミュレータPSpice入門編」の付録だと思いますが、検索すればWeb上にもあると思います。

信号源のV1はAD9833のつもりで信号源の出力抵抗Rserを270Ωとした。

「迷走の果て・Tiny Objects」さんの記事によるとAD9833の出力抵抗は260Ω程度となっていて、測定したところやはり260~270Ω程度のようだ。

AD9833から1kHzのサイン波を出力し、無負荷で測定すると628mV(MAX)、270Ωを負荷抵抗とすると316mV(MAX)。

Vbはバイアスポイントで9VのVCCに対し2.6VになるようにR1とR2で分圧している。トランジスタのベース・エミッタ間電圧Vbeで0.6V程度下がるのでVeエミッタ電圧は2V近辺になる。エミッタ電流は1mA流すつもりでR3は2kΩとした。

ここまでは本の通りだが、R4のコレクタ抵抗を決めるのが難しかった。

R4の値は、

  • R4/R3で回路の増幅率を決める。
  • R4に電流を流して電圧降下させVcの動作点を決める。
  • R4は回路の出力インピーダンスになる。

と、回路の特性にいろいろ影響して、あちらを立てればこちらが立たずの状態になってしまう。仕方がないのでLTSpiceのパラメータ解析で妥協できるポイントを探ることにした。

過渡解析

出力

出力波形(V(out))と入力波形(V(in))。

増幅率を上げるためにはR4の値を上げたほうがいいが、5kΩ~7kΩ(2.5倍~3.5倍)でシミュレーションしてみると、6kΩ(3倍)以上では出力波形が歪んでしまう。したがってこの条件だとR4が6kΩのときの約3倍増幅が上限ということになる。

ベース電位

ベース電位(V(vb))と入力波形(V(in))。V(Vb)はV(in)からDC成分を除いた波形がベース・バイアス電圧の約2.5V分正側にシフトされている。

エミッタ電位

エミッタ電位(V(ve))とベース電位(V(vb))。エミッタ電位はベース電位からベース・エミッタ間電圧分の約0.6V分低い波形になっている。

コレクタ電位

エミッタ電位(V(ve))とコレクタ電位(V(vc))。これを見るとR4コレクタ抵抗の抵抗値を上げると振幅が制限される理由がわかると思う。R4にたくさん電流が流れて電圧降下した結果、Vc(コレクタ電位)を下げようと働いても、Ve(エミッタ電位)が約2Vあるのでこれ以上は下げられなくなる。

ということは、R4コレクタ抵抗の抵抗値を上げて増幅率を稼ごうとしてもそれができなくなり、約3倍の増幅率が上限ということになる。

エミッタに流す電流値やバイアスの電位など前提条件を変えてもっと最適な値を導き出せるかもしれないが、これはシミュレーション上の話で、素子の特性のばらつきや、電源電圧の変動、熱の影響など考慮しだすとかなり複雑な話になってくる。歪やノイズなどの性能が絡んでくるともはや始末に負えない(@@;

基本的にはたった1個のトランジスタと抵抗4本のエミッタ接地回路でも、きちんと設計するのはなかなか闇が深い世界です。

ブレッドボードでの実験もしていますが、また次回。