2018年5月9日水曜日

アクティブ・フィルター vs パッシブ・フィルター 4次LPF

いままでに何度かアクティブ・フィルター回路を組んだことがありますが、一度パッシブ・フィルターと比較してみたいと思います。特性を決められる4次ローパスフィルタで

アクティブ多重帰還 LPF
アクティブVCVS LPF
パッシブRLC LPF

の比較です。特性をバターワースにしてLTSpiceでシミュレーションしてみます。

4次バターワース特性は「OPアンプ大全」に載っている<表4-2>バターワース設計表から

ステージ F0 Q
1st f0=1.0000 Q=0.5412
2nd f0=1.0000 Q=1.3065

多重帰還 4次LPF バターワース特性


カットオフ周波数を1kHzとして「OKAWA Electric Design」のフィルター計算ツールを使って定数を求めました。(以下同)

f0=1kHz Q=0.5412

R1 = 4.7kΩ
R2 = 12kΩ
R3 = 4.7kΩ
C1 = 0.047uF
C2 = 0.01uF

f0=1kHz Q=1.3065

R1 = 3.3kΩ
R2 = 12kΩ
R3 = 3.3kΩ
C1 = 0.15uF
C2 = 0.0047uF

シミュレーション回路図

AC解析

カットオフ周波数1kHz付近、それ以上は-80dB/decで減衰しています。

過渡解析

1kHz/1Vp-pの矩形波を入力すると、1kHzがカットオフ周波数のため出力は基本波のサイン波状になります。AC解析で@1kHzで180°位相が遅れていると読み取れ、過渡解析でも入出力で位相が反転しています。

多重帰還フィルタは単体(2次フィルタ)では位相反転しますが、2段連結しているので(4次フィルタ)合わせると出力は位相非反転になります。@1kHzで位相反転しているのはフィルターによる位相遅れによるものです。

VCVS 4次LPF バターワース特性


f0=1kHz Q=0.5412

R1 = 33kΩ
R2 = 12kΩ
C1 = 0.01uF
C2 = 0.0068uF

f0=1kHz Q=1.3065

R1 = 82kΩ
R2 = 27kΩ
C1 = 0.01uF
C2 = 0.001uF

シミュレーション回路図

AC解析

多重帰還と同様にカットオフ周波数1kHz付近、それ以上は-80dB/decで減衰しています。

過渡解析

過渡解析も多重帰還と同様です。

パッシブ 4次LPF バターワース特性


L=100mH

f0=1kHz Q=0.5412

R = 1.2kΩ
C = 0.22uF
L = 0.1H

f0=1kHz Q=1.3065

R = 510Ω
C = 0.22uF
L = 0.1H

アクティブ・フィルターの場合は2次LPFを連結していけば高次のLPFがつくれましたが、パッシブ・フィルタの場合は単純に連結するとちょっと問題があります。

シミュレーション回路図

AC解析

過渡解析

AC解析のグラフが折れ曲がっている1.5kHz付近より高い周波数ではおおよそ‐80dB/decで減衰しますが、カットオフ周波数より低い周波数でも緩やかに減衰しています。

これは1段目と2段目のインピーダンスが干渉しているためだと思います。1段目と2段目の間にバッファとしてボルテージフォロワを入れると改善されます。

シミュレーション回路図

AC解析

過渡解析

ところが、せっかくパッシブ・フィルタなのに回路に能動部品を入れてしまうのはおかしな話です。電源が必要になるのとOPAMPの特性がフィルタ回路の特性に大きく影響してしまいます。

LとCの値でカットオフ周波数が決まり、Rの値でQ値(周波数特性のピーク、応答の振動)が決まるのでRの値をいろんな値にして力技で決めていけば、RCLだけである程度満足できる特性になるかもしれませんが、やはりツールや計算で決めたいところです。

インダクタは今まであまり使ったことがなく(低周波回路ではよっぽどのことがない限り出てこない)これからの課題にしたいと思います。

また、実際に使おうと思っている太陽誘電のLHL10NB104Jの仕様は

インダクタンス 許容差 直流抵抗(max)
100mH ±5% 240Ω

となっています。この分を差し引くと直列に入れるRの値は下記のようになります。

シミュレーション回路図

R3、R4はL1、L2のESR。

AC解析

次回はそれぞれブレッドボードで実験したいと思います。

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