CoolAudio社のV3320を使ってVCF(4次LPF)を製作しました。V3320については「4次VCF V3320(CEM3320互換)の動作確認」で書きました。
回路図
ブレッドボードテスト用配線
基本的にはV3320のデーターシートに掲載されているLPF回路です。
主に以下の点を変更しています。
- カットオフ周波数のPOTによる設定とCVによる変調をミックスするための反転加算回路を追加。
- レゾナンスの効きをよくするため出力にアンプを追加し、レゾナンス用の正帰還入力(IRES:PIN9)に入力。
- CR類を入手容易な値のものに変更し、一部交換可能なようにピンソケットを使って実装。
「Electric Druid」さんの「CEM3320 Filter designs」の記事によると、出力にアンプを付加すると低い周波数でレゾナンスの効きが良くなるそうです。Sequencial Pro-Oneで採用されているテクニックです。
出力の測定
カットオフ周波数のバイアスを設定するCutoff Trim(RV4)は最大に設定して測定しました。カットオフ周波数が最も高くまで設定できるようになります。
INのPOTは最大、FCV1、FCV2、QCVのPOTは0に設定しています。
IN: 1kHz/Sawtooth 2Vp-p
Cutoff: 1時の位置 (+6.0V)
Resonance: 0 (0V)
C1:IN C2:OUT
IN: 1kHz/Sawtooth 2Vp-p
Cutoff: 1時の位置 (+6.0V)
Resonance: 1時の位置 (+6.0V)
C1:IN C2:OUT
IN: 1kHz/Sawtooth 2Vp-p
Cutoff: 1時の位置 (+6.0V)
Resonance: 最大(+12.1V)
C1:IN C2:OUT
※共振の様子を見るために横軸の縮尺を変えています。
IN: 1kHz/Sawtooth 2Vp-p
Cutoff: 最大 (+12.1V)
Resonance: 0 (0V)
C1:IN C2:OUT
IN: 1kHz/Sawtooth 2Vp-p
Cutoff: 最大 (+12.1V)
Resonance: 1時の位置 (6.0V)
C1:IN C2:OUT
IN: 1kHz/Sawtooth 2Vp-p
Cutoff: 最大 (+12.1V)
Resonance: 最大 (+12.1V)
C1:IN C2:OUT
レゾナンスを大きくすると発振します。発振周波数はカットオフ周波数になります。
レゾナンス(Q)は共振の意味で、LC回路の場合
ω = 1 / √(LC)
ですが、シンセなどRC低周波回路ではL(コイル)は使わず正帰還により共振を発生させます。共振が大きくなると自己発振してオシレーターとして振る舞います。この回路でも自己発振します。発振周波数はカットオフ周波数に追随します。
無入力でレゾナンスを上げた自己発振
C1:OUT
綺麗な正弦波の発振波形です。(その分あまり面白みはないかも?)
周波数特性
位相が180度回る位置が1kHz付近になるようにCutoff(RV3)を調整して測定しました。
Cutoff: +5.73V
Resonance: 0 (0V)
Cutoff: +5.73V
Resonance: 1時の位置 (+6.0V)
Cutoff: +5.73V
Resonance: 最大 (+12.1V)
C1:IN C2:OUT
メモ
カットオフ周波数がもう少し高い周波数まで設定できるようにピンソケットで実装している抵抗の値を調整したほうが良さそうです。
また出力アンプの増幅率によりレゾナンスがどのように変化するかも試してみる価値はありそうです。
トランジスタラダー・フィルターのTLF01と比較すると、フィルターとしての性能に優れています。カットオフ周波数を変化させても出力レベルがあまり変わらず、カットオフを絞っていくと正弦波に近い波形に落ち着いていきます。扱いやすく適用範囲の広いLPFだと言えると思います。