2021年11月12日金曜日

ノイズジェネレータ NOS02の試作

作った結果があまり良くないので今回は製作ではなく、試作としています。


以前、キックマシンKIK01を製作したときにノイズジェネレータNOS01を製作し利用しています。普通のシンセでもノイズ音源は必要なので、Eurorack仕様で試作しました。

回路図

「A」の部分がノイズを生成するコアの部分です。2SC1815のような足の並びがECBのものとBC547のようなCBEのものが試せるようにトランジスタのパターンを2種用意しています。

コア部は出力電圧が低いので後段のOPアンプで増幅します。コア部で発生するノイズはホワイトノイズなので、J2以降のフィルタを通してピンクノイズやブルーノイズを生成します。厳密なピンクノイズやブルーノイズは減衰が-3dB/Octですが、一次RCフィルタの減衰は-6dB/Octの傾きを持っており、RCフィルタで-3dB/Octの傾きを実現するのはなかなか難しい話です。

ピンクノイズ用のフィルタはAnalog 2.0を参考にしました。ブラウニアンは1次LPF、ブルー1は1次HPF、ブルー2はさらに1次HPFを重ねています。

ホワイトノイズ発生コア部


コア部のみ実装して出力を観測しました。


J2(コア部の出力)の波形

J2の出力が±5Vpp程度になるようにRV1を調節しています。

J2のスペクトラム

OPアンプで100倍以上増幅しているためハイ落ちしています。また100Hz付近のピークは商用電源由来のハムノイズだと思います。

J2 FFT

横軸をリニアにして低域を見ると60Hz、120Hz、180MHzにピークがあります。しかも結構でかい。

U2の3Pin

ノイズを生成するトランジスタの素の出力です。測定値を見ると30mVpp程度です。

U2の1Pin

1段目のアンプの出力です。0.7Vpp程度になっています。

フィルター部


Brownian: 1次LPF
Pink: 1次LPFにゼロを追加
White: コア部の出力
Blue1: 1次HPF
Blue2: 2次HPF

として、ノイズの帯域を制限します。Analog Discovery 2のNetwork機能を使って周波数特性を測定しました。

Blownian

Pink

Blue1

Blue2

結合

J2をショートしコア部の出力をフィルターに通した波形を観測しました。

Blownian

Pink

BrownianとPinkにははっきりとハムノイズの波形が視認できます。

White

Blue1

Blue2

試聴


ERK01に組み込んで音出ししてみました。

特にPinkやBrownianで「ブーン」とハムノイズが乗っているのが聴き取れます。また、単体で鳴らしてもVCOの音が混入するようです。電源からの混入でしょうか。1000倍以上増幅しているので仕方がないのかも知れません。

またフィルターの色ごとの音量(エネルギー)がバラバラで同じ程度になるように調整する必要があります。今回は増幅率を決める抵抗をピンソケットを介して実装しているので結果をもとに変更するつもりです。

ベースコレクタ逆電圧の回路がちょっとおかしい可能性があります。Spiceでシミュレートできないので実験するしかないのですが。VCOとMIXすればほとんど気にならないのでひとまずこのまま活用します。

ホワイトノイズの生成は、ツェナーダイオードを使った方法(これもPN接合の降伏時に発生するノイズ)やロジックICを使った方法もあるので、いずれ試してみたいと思います。

2021年11月2日火曜日

LME49600HPA V2.1 2台目の製作

オーディオインターフェイスのベリンガーUMC404HDのヘッドホン出力が貧弱なため、LME49600を使ったヘッドホンアンプを製作しました。

アナログシンセを製作していると、音量を上げたときに矩形波状に歪んだ場合かえって良い感じに聴こえる場合があります。感覚的に言うと音が太くなります。ヘッドホン出力が歪むと一体何を作っているのかわからなくなるので、これを改善するのが目的です。歪を楽しむために歪みを極力少なくします。

今回は電源を同じ筐体に収めました。

ケース内部

前面

背面

主な構成は以下の通りです。

メイン基板
LME49600 HPA V2.1のDCサーボバージョンです。レギュレータ基板に問題があるため、並列にしているデカップリング・コンデンサの片方をショットキーバリアダイオードに置き換えて、逆電圧を逃がすように変更しています。

レギュレータ基板
AliExpress(Aiyima)で購入したLM317/LM337使用の可変量電源基板(サーボなし)です。前述の通り問題がありそうなためメイン基板側で対策しています。±12V出力に調整しました。

電源トランス

配線図

ケース: タカチ YM-200
標準ステレオジャック(入力): マル信 MJ-187
標準ステレオジャック(出力): マル信 MJ-187LP
パイロットランプ: AC110V 5mmΦ白色LED
ヒューズ: ミゼット 0.5A
ACケーブル用ブッシュ: GM-81I3

以前も間違えましたが、共立で購入した台湾製オーディオ用2連は端子を上向きに取り付けるとケースと干渉します。固定用の小孔を開け直して横向きに取り付け直しました。


配線が複雑になるので、入力ジャックとPOTは基板に取り付けたほうが良さそうです。ただし、このPOTは端子の径が1mmなので普通のユニバーサル基板(ホール径0.8Φ)だと挿入できません。

出力特性


Analog Discovery 2で出力特性を測定しました。

1kHz/1Vpp入力 負荷抵抗RL=100Ω フルボリューム

フルボリュームで約10倍の増幅率です。

1kHz/2Vpp入力 負荷抵抗RL=100Ω フルボリューム

入力電圧を2Vに上げると出力は±10V付近でクリップします。(OPアンプはMUSES8820)

スペクトラム 1kHz/1Vpp入力 負荷抵抗RL=100Ω フルボリューム

THD:0.015%、THD+N:0.522%となりました。

UMC404HDの出力を入力


WaveGeneで1kHz/0dBのサイン波を出力し、UMC404HDのPHONE、MAIN OUT、PLAYBACK OUTPUTSからLME49600HPAに入力し、出力波形を観測しました。

PHONE

UMC404HDのPHONEのボリュームは12時の位置です。

MAIN OUT(L)

PLAYBACK OUTPUTS(1)

波形がガタガタなのは、UMC404HDの出力波形が良好ではないためです。


波形は汚いままですが、出力振幅は十分稼げています。UMC404HDのPHONE出力は最大4Vppなのに対して、今回製作したヘッドホンアンプは最大20Vppまで出力可能で、比較的高インピーダンス低能率のAKG K701もドライブできているようです。

いずれ、UMC404HDとヘッドホンアンプの間にローパスフィルタを入れて波形が整うか見たいと思います。年齢的に聴感上の違いがわかるかどうか自信はないですが。

参考「8th_MFB_LPF