2022年8月18日木曜日

FV01 マルチエフェクタの製作 その2 インターフェイス回路

回路図

入力信号を1/3に減衰させ、FV-1に入力。FV-1の出力と1/3に減衰させた入力信号をMIXし、3倍に増幅して元の振幅に戻す回路です。

簡単な回路ですが、問題点が3点ありました。

  • モノラル入力で使用するとき、原音がMIXされない。
  • DRY/WET回路でWET側に振り切っても原音が残る。
  • DRY/WET回路で中間付近にしたとき出力振幅が低下する。

モノラル入力で使用する場合の問題


回路図を追ってください。「SW-1(SW-MONO)」でFV-1のRFXINに入力される信号を入力のL/Rどちらにするか切り替えています。LにするとFV-1のLFXIN/RFXINはどちらも同じ入力信号(LIN)が入力されモノラル入力→ステレオ出力となります。

ところが後段のミキサーのDRY側(原音)がRINのままであり、RINに入力がない場合は、DRY/WETを調節してもFV-1の出力振幅が変化するだけで、原音はMIXされないことになってしまいます。

したがって、SW_MONOは使用できず、モノラル入力で使用する場合は、外部でMultipleモジュールなどを使って信号を分岐させ、LIN/RIN両方に入力する必要があります。

直すとすれば、LIN入力を分岐させてR側に振ってしまうのが簡単でしょうか。

DRY/WET回路の問題


インターフェイス部の図面だとわからないのですが、コア部の図面を見ると出力にLPF/HPFが入っていて単純にRだけでも1kΩの出力インピーダンスがあります。

R15、R17が1kΩの出力インピーダンスとなる。

インターフェイス部の可変抵抗RV2で原音とエフェクト音を分圧して、U1/B、U2/Bの反転アンプに入力しているので、RV2をWET側に振り切っても50kΩ:1kΩの分圧になって、原音がいくらか残留してしまうことになります。

またDRY/WETを調節する可変抵抗R2を中点付近にすると、DRYのみ、WETのみの場合に比べてMIXされた信号の振幅が小さくなってしまうようです。

インターフェイス回路の特性


インターフェイス回路が思惑通りの特性が出ているかどうか測定しました。FV-1モジュールは挿入しない状態での測定です。

IN→FXIN 


入力からFV-1に渡すまで信号振幅が1/3になっているかどうか。POTはInput Level:最大、DRY/WET:DRY側としています。入力信号は1kHz/2Vp-p正弦波です。

IN→FXIN入出力(Lch)

C1:LIN C2:LFXIN

IN→FXIN入出力(Rch)

C1:RIN C2:RFXIN

正確には100kΩと330kΩなので、入力に対して1/3.3の振幅となります。

2.0Vp-p × (1 / 3.3) ≒ 0.61Vp-p

反転増幅アンプなので出力は逆位相です。

IN→FXIN周波数特性(Lch)

IN→FXIN周波数特性(Rch)

約1/3なので-10dBです。

FXOUT→OUT


FV-1の出力が3倍の信号振幅になって出力されているかどうか。POTはInput Level:最大、DRY/WET:WET側としています。入力信号は1kHz/2Vp-p正弦波です。

FXOUT→OUT入出力(Lch)

C1:LFXOUT C2:LOUT

FXOUT→OUT入出力(Rch)

C1:RFXOUT C2:ROUT

入力アンプとは逆に330kΩと100kΩなので、入力に対して3.3倍の振幅となります。

2.0Vp-p × 3.3 = 6.6Vp-p


反転増幅アンプなので出力は逆位相です。

FXOUT→OUT周波数特性(Lch)

FXOUT→OUT周波数特性(Rch)

約3倍なので+10dBです。低域の位相は暴れて見えますが、180°前後で少しふらついているだけです。

IN→OUT


原音が元の信号振幅のまま出力されているかどうか。POTはInput Level:最大です。FV-1からの出力を受けるJP2、JP3は短絡しています。FV-1モジュールは挿入していませんが、R16、R18により接地されていて、WET側の入力はGNDになります。

IN→OUT入出力 RV2:DRY側(Lch)

C1:LIN C2:LOUT

IN→OUT入出力 RV2:DRY側(Rch)

C1:RIN C2:ROUT

IN→OUT周波数特性 RV2:DRY側(Lch)

IN→OUT周波数特性 RV2:DRY側(Rch)

可聴帯域ではほぼ原音のままと言って良いと思います。

IN→OUT入出力 RV2:WET側(Lch)

C1:LIN C2:LOUT

IN→OUT入出力 RV2:WET側(Rch)

前述の通り、困ったことにWET側に振り切っても原音が出力されています。

IN×FVOUT→OUT


入力信号とエフェクト信号がMIXされて信号振幅が一定のまま出力されるかどうか。

IN端子とFXOUT(JP2、JP3)にそれぞれ1kHz/2Vp-pの正弦波を同相、逆相で入力し、OUTの出力を観測しました。

同相入力


IN×FVOUT→OUT 同相入力 DRY側(Lch)

C1:LIN C2:LOUT

IN×FVOUT→OUT 同相入力 DRY側(Rch)

C1:RIN C2:ROUT

IN×FVOUT→OUT 同相入力 DRY/WET中間付近(Lch)

C1:LIN C2:LOUT

IN×FVOUT→OUT 同相入力 DRY/WET中間付近(Rch)

C1:RIN C2:ROUT

少しややこしいですが、L/R INからの入力はU1A、U2Aの反転増幅アンプを通過しているのでMIXされる時点では逆相になります。逆相の信号を足し合わせると0となります。

IN×FVOUT→OUT 同相入力 WET側(Lch)

C1:LIN C2:LOUT

IN×FVOUT→OUT 同相入力 WET側(Rch)

C1:RIN C2:ROUT

WET側のエフェクト音はU1B、U2Bの反転増幅アンプのみを通っているので、WET側に振り切ると出力は逆相になります。

逆相入力


IN×FVOUT→OUT 逆相入力 DRY側(Lch)

C1:LIN C2:LOUT

IN×FVOUT→OUT 逆相入力 DRY側(Rch)

C1:RIN C2:ROUT

IN×FVOUT→OUT 逆相入力 DRY/WET中間付近(Lch)

C1:LIN C2:LOUT

IN×FVOUT→OUT 逆相入力 DRY/WET中間付近(Rch)

C1:RIN C2:ROUT

この場合、MIXされる時点では同相信号になっており、合成された出力信号は半分半分が足し合わされ元の振幅になって欲しいのですが、入力が2Vp-pなのに対し出力が1.79Vp-pに低下しています。

IN×FVOUT→OUT 逆相入力 WET側(Lch)

C1:LIN C2:LOUT

IN×FVOUT→OUT 逆相入力 WET側(Rch)

WET側は逆相入力で、反転アンプを通っているので結局DRY側と同相信号が出力されています。

長くなりました。

メモ


原音が残留する問題は、FV-1の出力フィルタをRCフィルタではなくアクティブフィルタにすれば解決しそうです。理想的にはアクティブフィルタの出力インピーダンスは0です。

MIXの中間付近で振幅が低下するのは、POTによる分圧と反転増幅回路の間にボルテージフォロワなどのバッファを入れれば改善されそうですが、抵抗だけで合成するのではなく、反転加算回路として扱ったほうがスッキリするかも?

DRY/WET回路についてはもう少し勉強した方がよさそうです。
 
現状の回路は、使えなくはないが文句言われたらすみませんでしたという感じです。

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