2022年8月28日日曜日

FV01 マルチエフェクタの製作 その4 補足

FV01 Ver.1.0を製作してわかった問題点についての考察です。

パネルマウント


今回は秋月のロータリースイッチを使用しており、パネルは12HP(60.6mm)です。
小径ロータリースイッチを使えば10HP(50.5mm)にできそうです。

DRY/WET回路の改善

インターフェイス回路図
FV-1コア回路図

DRY/WET回路1


DRY/WET回路はRV2A/Bの可変抵抗器周辺です。可変抵抗を中点あたりに設定すると音量が低下する問題です。

DRY/WET回路部分のみシミュレーションしました。

シミュレーション回路図

R1、R2が50kΩの可変抵抗器です。R1+R3とR4の反転増幅回路とR2+R3とR4の反転増幅回路の重ね合わせと考えることができます。

過渡解析

シミュレーションで一番振幅が小さくなった場合(POT中点25kΩ:25kΩ)、±0.89Vで2 * 0.89 = 1.78Vp-pとなり実機での測定と一致します。

DRY/WET回路2


もう一つDRY/WET回路でよく使われる回路もシミュレーションしました。

シミュレーション回路図

R3とR4が50kΩの可変抵抗器です。

過渡解析

こちらは逆に可変抵抗器が中点になったとき振幅が最大になります。

DRY/WET回路1にバッファを入れる


分圧回路と反転増幅回路の干渉を避けるためにボルテージフォロワのバッファを入れてみました。

シミュレーション回路図

過渡解析

これは望み通り出力振幅が一定となります。

DRY/WET回路1を非反転増幅回路に変える


増幅率1だとボルテージフォロワになってしまうので、(1+3.3)倍の非反転増幅回路にしてシミュレーションしました。非反転増幅回路は入力インピーダンスが非常に高いので抵抗分圧回路の影響を受けません。

シミュレーション回路図

過渡解析

こちらも振幅が一定となります。インターフェイス回路の入力が反転増幅回路なので、全体として位相が反転してしまいます。この場合は入力も非反転増幅回路にしたほうが良さそうですが、非反転増幅回路は1倍以下の増幅率(減衰)が設定できないので、入力部は抵抗による分圧+バッファという構成になりそうです。

FV-1コア部の出力とDRY/WET回路の干渉


FV-1コア部の出力インピーダンスが高いため、DRY/WET回路でWET側に振り切ってもDRY(原音)が残ってしまう問題があります。

シミュレーション回路図

過渡解析

WET側(赤の線)で逆相の原音がMIXされるため振幅が小さくなっています。中点(青の線)でもDRY側の信号成分が少し残っています。

この問題もFV-1コア部の出力にバッファを入れれば改善されます。

シミュレーション回路図

過渡解析

DRY側、WET側ともに振幅が±1Vになっています。

中点(青の線)では多少波が残っていてDRY音、WET音が0Vでクロスするところで振幅が大きくなっているようです。

過渡解析(拡大)

これはWET側がRC一次HPF、LPFを通過しているため位相がずれるのが原因です。実機では問題ないでしょう。

フィルターを除去したシミュレーション回路図

過渡解析(拡大)

フィルターを介さない場合中点(青の線)の振幅がほぼ0になります。

まとめ

実機を使ってみると、DRY/WETの中点あたりで音量が下がってしまうのはかなり気になります。

WET側に振り切っても原音が残るのは、リバーブ等の普通のエフェクトの場合はそれほど気になりませんが、ピッチシフトで完全に音程を変えたい場合は困ります。

部品数が増えるのはあまり好みではないのですが、デジタルエフェクタということを考えると仕方ないかと思います。

OPアンプのボルテージフォロワは面積を取るので、トランジスタのエミッタフォロワとACカップリングで繋いでいくというのも、ギターエフェクタならまだしもシンセ用にちょっとどうかな、と思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿