2022年8月13日土曜日

FV01 マルチエフェクタの製作 その1 電源回路とFV-1コア回路


Spin SemiconductorのReverb IC FV-1を使ってEuroRack仕様のエフェクタを製作しました。FV-1は簡単に言うとADC→DSP→DACをひとまとめにしたICで、オーディオ(アナログ)信号の経路に挟み込むことで、比較的簡単にデジタルエフェクタを作ることができます。また、DSPのプログラムは内蔵されたもの以外にも、外付けのEEPROMに書き込んだプログラムを利用することも可能です。

FV-1データシートより

エフェクト・プログラムはSpin Semiconductor製のSpinAsm IDEを使って自作することも可能ですし、すでに本家他、多くの方がプログラムを公開されています。

FV-1は3.3V駆動ということもあり、ギター用の作例はよくあるのですが、信号の振幅が大きいアナログシンセ用にEuroRack仕様で製作しました。

回路図

インターフェイス回路
FV-1コア回路

インターフェイス回路では、アナログシンセの10Vp-p程度の音声信号を、FV-1に入力可能な3.3Vp-p程度に減衰させ、原音とエフェクト音をMIXした後再び元の振幅まで増幅しています。

今回は、動作確認に必要な電源部とFV-1コア回路から製作しました。


電源回路


電源はEuroRackの16ピンボックスコネクタを使用しています。+12V、-12V、+5Vの電源が来ているので、3.3V LDOのU3(TA48M033F)でFV-1用の3.3Vを作ります。FV-1の電源電流は70mA/Max、他にもいろいろと電流が必要で、LDOを放熱器をつけずに利用するので500mA程度の品種が良いと思います。

FV-1コア回路


FV-1はICをそのまま使うのではなく秋月のDIP化モジュールを使用しました。

FV-1モジュールのPin1はL入力、Pin2はR入力です。C14、C20でACカップリングしています。Pin1、Pin2は+1.65Vのバイアスが掛かっているのでACカップリングすると+1.65Vを中心とする波形になります。

インターフェイス回路で入力信号を3.3Vp-p程度に減衰させていますが、Max3.3Vが確実ではないのでD4、D5、D6、D7のショットキーバリアダイオードで入力保護を行います。

R14/C16、R19/C21は1次LPFです。回路図の定数だとカットオフ周波数は160kHzですが、変更できるようにピンソケットを使って実装しました。どのあたりが適当かは実際に使って差し替えてみるつもりです。


FV-1モジュールのPin18はL出力、Pin17はR出力です。DACからの出力なので一次HPFを入れてDC成分を除去してGNDレベルに戻し、一次LPFでエイリアスを除去します。FV-1のデータシートのTypical Applicationと同程度になるように値を決めましが、変更できるようにここもピンソケットを使って実装しました。

U5(24LC32)は外部EEPROMです。J6のピンヘッダでオンボードでプログラミングできるようにしています。I2Cは信号線(SCL/SDA)のプルアップが必要ですがFV-1側で内部プルアップされています。EEPROMにプログラミングするときはプログラマ側でもプルアップしたほうがいいか悩ましいところなので、プログラマ側でプルアップの有無を選択できるようにします。

U6(74HC148)は8to3エンコーダです。FV-1モジュールのPin10~Pin12(S0~S2)の3Pinの2進値でプログラムを選択するようになっていますが、8to3エンコーダを使って8接点のロータリースイッチでプログラムを選択できるようにしました。


コア部の外付け回路の特性の測定


FV-1モジュールを挿入しない状態でコア部の外付け回路の特性を測定しました。

入力保護とACカップリング


1kHz/2Vp-pの正弦波を入力(Lch)

C1:LFXIN C2:U4-Pin1(LIN)

1kHz/2Vp-pの正弦波を入力(Rch)

C1:RFXIN C2:U4-Pin2(RIN)

ACカップリングしているためGNDのやや下から正側に振れる波形になります。電位はGNDに逆接続されたショットキーバリアダイオードで決まってるようですね。

1kHz/6Vp-pの正弦波を入力(Lch)

C1:LFXIN C2:U4-Pin1(LIN)

1kHz/6Vp-pの正弦波を入力(Rch)

C1:LFXIN C2:U4-Pin2(RIN)

6Vp-pの信号を入力するとショットキーバリアダイオードによる入力保護で、-0.3V~+3.6V程度に振幅が制限されます。

入力部のAC特性


入力部AC特性(Lch)

C1:LFXIN C2:U4-Pin1(LIN)

入力部AC特性(Rch)

C1:RFXIN C2:U4-Pin2(RIN)

入力部の高域の特性は100kHz程度です(計算値より下がっている)。低域は20Hz(測定下限)までフラットです。

出力部のAC特性


出力部AC特性(Lch)

C1:U4-Pin18(LOUT) C2:LFXOUT

出力部AC特性(Rch)

C1:U4-Pin17(ROUT) C2:RFXOUT

出力部の高域の特性は80kHz程度です。低域は20Hz(測定下限)までフラットです。

コア部の特性の測定 FV-1あり


FV-1モジュールを挿入して回路の特性を測定しました。

入力保護とACカップリング FV-1あり


1kHz/2Vp-pの正弦波を入力 FV-1あり(Lch)

C1:LFXIN C2:U4-Pin1(LIN)

1kHz/2Vp-pの正弦波を入力 FV-1あり(Rch)

C1:RFXIN C2:U4-Pin2(RIN)

FV-1のPin1は1.65Vのバイアスが掛かっているため、入力信号の中心の電位は+1.65Vとなります。

1kHz/6Vp-pの正弦波を入力 FV-1あり(Lch)

C1:LFXIN C2:U4-Pin1(LIN)

1kHz/6Vp-pの正弦波を入力 FV-1あり(Rch)

C1:LFXIN C2:U4-Pin2(RIN)

6Vp-pの信号を入力するとショットキーバリアダイオードによる入力保護で、-0.3V~+3.6V程度に振幅が制限されます。

入力部のAC特性 FV-1あり


入力部AC特性 FV-1あり(Lch)

C1:LFXIN C2:U4-Pin1(LIN)

入力部AC特性 FV-1あり(Rch)

C1:RFXIN C2:U4-Pin2(RIN)

入力部の高域の特性は100kHz程度です。低域は20Hz(測定下限)までフラットです。FV-1挿入前より低域の位相が少し進んでいますね。

FV-1 Prog.#5


FV-1のProg.#5は無処理のプログラムだと思われます。ADC→(DSPは無処理)→DAC。1kHz/2Vp-pのノコギリ波をこのプログラムを通してみました。

Prog.#5 ノコギリ波(Lch)

C1:LFXIN C2:LFXOUT

Prog.#5 ノコギリ波(Rch)

C1:RFXIN C2:RFXOUT

ノコギリ波の頂点付近にオーディオ用DAC特有の振動が現れていますね。オーバーサンプリングされているようです。

参考


FV-1のプログラム・リポジトリ

Erectric Canary: Getting Started with the  FV-1 https://electric-canary.com/fv1start.html
Spin CAD DesignerなどFV-1のDSPプログラミングについて

ギター用のエフェクタボード販売

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