このBlogを始めたころはデバイスの限界、自分の技術や知識の限界がよくわからず暗中模索でしたが、このデバイスならこれぐらいはできそう、逆にこれは無理だろうという線引きがある程度できるようになってきたと思います。
アナログ回路は頭ではこういうことだろうなと理解できても、自分で回路を組んで挙動を見ないことには使いこなすことはできません。
ひとつひとつはしょーもなさそうに見える回路でも、自分の手で組み上げることによって、より大きな回路を考えるときに応用が効くようになると思います。囲碁や将棋でいうと詰碁、詰将棋です。しょーもないと思っていた回路が実は非常に深い意味を持っていることに気づかされることがよくあります。
一言でいうと、「一筋縄ではいかない」です。
ソフトウェアでも規模が大きくなると大変なことになりますが、アナログ回路の場合は選択肢が二値ではないため理屈で考えてもダメなことが多く(もしくは小難しい計算をしないと導き出せない)、複雑さはソフトウェアの比ではありません。体育会系的に「体で覚えろ」という世界なのかもしれません。
設計するのは大変ですが、アナログ回路はソフトウェアとは違って全体の構成が「目で見てなんとなくわかる」メリットがあると思います。
ベースマシン
2016年に製作したSPI制御のモノ・シンセです。モジュラー・シンセのように基板を取り換えて拡張できるようにしています。各モジュールのパラメーターはすべてシーケンサーからSPI経由で設定できるようにしています。
アナログ・シンセがVoltage Controlなのに対して、ベースマシンはSPI Controlのハイブリッド・シンセです。
目下の課題はシーケンサーのSPIコマンド送出周期が1kHzが上限のために発生するノイズ対策です。
詳細は「ベースマシン まとめ 2」にまとめています。
今後はBSM02として開発を続ける予定です。
KIK01
Sonic AcademyのKICK 2というソフト・シンセにインスパイアされて作ったDrumシンセです。
KICK音に特化していますが、設定によってはSNARE、TOMっぽい音にもなります。
基本的に808/909 KICKのぬくさを踏襲して、アナログ回路で音色のバリエーションを出せるようにしています。KICK音にゴーストっぽい音を足せるようにノイズ発生回路も入れています。
ベースマシンと同じように各モジュールはSPI制御していて、POTの設定値をADCで拾い、デジタル的に音をリアルタイムに変化させられるようにしています。
詳細は「KIK01 まとめ」でまとめています。
両電源IC(LT1054とMAU106)
ベースマシンはLT1054で単電源のACアダプタから両電源をつくりましたが、KIK01はMAU106で両電源をつくりました。今のところ両方ともちゃんと動作しています。値段はMAU106の方が若干高くパッケージサイズも大きいですが、出力波形はMAU106の方がきれいだと思います。
またLT1054は非絶縁なので入力側と出力側でGNDを共通にする必要がありますが、MAU106は絶縁タイプのためGNDレベルをずらす用途でも使えると思います。(KIK01ではMAU106でもGNDを入出力で共通にしています)
オーバードライブ TS-OD1
Propellerhead ReasonにScream 4という「ディストーション」エフェクタがあります。これに「Tube」という設定があって、掛けてみても別に真空管ぽくないな~と思っていたのですが、どうやらこの設定はIbanezのTube Screamerを模したものだと思います。つまり真空管によるディストーションではなく、「真空管アンプを叫ばせる」エフェクターという意味です。
ギターはかつて練習してみたものの指が痛くなるのにどうしても慣れないのと、世の中にはギターが上手すぎる人がいることがいることがわかって嫌気がさしてやめてしまいました。
当時は残念ながら、エフェクターがどうのこうのというレベルまでには達しなかったのですが、今回、Tube ScreamerやRolandのOD-1、Proco RATの回路を調べてみてわかりました。
オーバードライブ・エフェクタと呼ばれるものの本質が、どうやらダイオードによるリミッターなのではないか。
そこで、ギターではなく自作のベースマシンにかけてみて良くなる具合を探りつつ、オーバードライブ・エフェクタを「TS-OD1」と名付けて製作しました。
作ってみて思ったのですが、歪系のエフェクトをシンセにかける場合は、ギター用のエフェクターよりVCFやVCAなどシンセそれ自体で歪ませた方が面白い気がします。
「タグ:TS-OD1」
AD9833ファンクションジェネレータ
Amazonで売っているAD9833を使ったDDS信号発生器モジュールを利用して実用的なファンクションジェネレータを作りました。
AD9833の出力用のDACが10bitなので可聴帯域では自作のPCM5102Aファンクションジェネレータと比べると波形は汚いですが、5MHz程度までサイン波を出力できます。
AD9833の仕様では12.5MHzまで出力できるとなっていますが、サンプリングレート付近になってくるとサイン波とは呼べない波形になってしまうので5MHz程度までで使用しています。
何と言ってもコアになる部分がAnalog DevicesのICなので安心感があり、アナログ回路を高周波数で評価する用途では大活躍しています。
「AD9833ファンクションジェネレータ でけた。」
可変電流源
電圧を加えればそれに比例した電流が出てくる回路です。
可変電圧源はキットでもよくあるのですが、可変電流源はなかなか無いので製作してみました。
なんとなく誤算気味な気もしますが使いどころがあればいいなあと思っています。
「可変電流源 でけた&リードベンダでジャンパ線の加工 」
Arduino LFO
まだ評価中ですが、Arduino NANOとSPI DACのMCP4922を使ってLFOを作りました。
基本的にはArduinoを使ったデジタル低周波発振器ですが、Arduinoしばりをかけつつアナログ回路にも使えるようにできるだけきれいな波形を出せるようにしました。
KIK01やBSM02の変調に使いたいと思っています。
「Arduino LFOでけた。」
Tr回路の実験
「定本 トランジスタ回路の設計」を読みながら、ブレッドボードで実験しました。
冒頭でも述べた通り、最初は「なるほど!なるほど!」と理解したつもりでむさぼりついて読んだ記憶があるのですが、いざ自分で回路を組んでみると、これは周到に用意された道しるべなのだと思いました。
よく考えずにやみくもに定数を変えて実験すると途端にひずみまくります。
今となっては、アキュフェーズの中の人の著作ならなるほどなあ~と思うところもありますが、やはり名著だと思います。
まだまだわからないことばかりですが、「定本 続・トランジスタ回路の設計」も読みながら実験していきたいと思います。
「タグ:Tr回路の実験」
木工
木工にもチャレンジしました。大きなサイズの市販のケースは価格が高いので、材料をおもに100均で調達して低コストで筐体を製作する方策を探りました。MDFは100均で調達していますが、サイズを考えるとホームセンターでも値段はあまり変わらないと思います。
木材は価格、加工のしやすさではMDF一択だとおもいますが、いかんせん木ねじが効かないしすぐに割れてしまうのが弱点だと思います。
MDFの工作は木ねじじゃなく木工用ボンドで接着することを基本として考えて構造を考える必要があると思います。
塗装はまだ試行錯誤中ですが、そのうちKIK01のフレームの塗装もやってみたいと思っています。
塗装の見栄えを気にしだすと、MDFではなく、単板を使うと木目がきれいに出ます。
単板材で安いと言えばSPFですが、SPFは薄くても1x4で板厚が19mmあります。
ホームセンターで10mm厚程度の単板材を探したら、アガチスという安くも高くもない単板が売っていたのを見つけて、ベースマシンの側板はアガチス材にニスを塗装して木目を生かして仕上げました。
単板のニス塗装は見た目や手触りがいいのでモチベーションアップにつながります。ギターのボディー程ではないすが、シンセもやはり楽器なのです(^q^/
「タグ:木工」
「タグ:プラスチック加工 」
運用の結果
この1年に限らず、運用中の製作物について気づいた点をまとめておきます。
LME49600ヘッドホンアンプ
最初は電池電源で使っていて、猛烈にノイズが乗っていて愕然としたのですが、「±9V安定化電源」を使うようになってノイズは気にならなくなりました。電池電源はそれ自体が発するノイズは少ないですが、商用電源を使うと大地へのアースがされることになるのでノイズを低減できるのかもしれません。
定量的に調べる気力はありませんが順調に爆音でいけます。
もう少し音量が欲しい気もしますが、さらに爆音再生するにはLME49600のバッファ回路の前段に入れているDCキャンセル回路の増幅率をもう少し上げたほうがいいかも。
「タグ:LME49600」
「トランスを使った±9V安定化電源 でけた(気がする)」
ミニ・ミキサー
仮想GNDの取り扱いに問題がありますが、電池電源では運用できています。電源を他の装置と共有するとやばいことになります(^q^;
画像の青〇で囲ったあたりに問題があります。
「Mini Mixerでけた」
「SVF DCF 出力のGNDを修正 仮想GNDの扱いには注意するべし 」
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