2018年10月4日木曜日

Nucleo DCO 出力部(LPF)の検討

ファームウェアのバグつぶしの検証に少々時間がかかりそうなので、出力部のLPFを検討しました。

出力部ブロック図(案)

「Level POT」でNucleo F767ZIのDACからの出力信号を減衰させます。「AC Coupling」で信号のDC成分を除去します。「Amp Buffer」はACカップリングとLPF間の干渉を避けるためのバッファと信号を増幅させるアンプを兼ねています。

出力部は仮想GNDで動作させるので、終段にも「AC Coupling」を入れます。

バターワース特性とベッセル特性のシミュレーション


LPFの要件は

・過渡特性がいいこと。

・遮断域50kHz。サンプリングレート62.5kHzでプログラミングしていますが、場合によっては50kHzまで下げる必要があるかもしれないので50kHzとしました。

・遮断域の減衰率は「Nucleo DCO 作戦検討 その4」でFFTした結果から-20dBとします。

・通過域20kHz(可聴帯域)以上。サンプリングレート50kHzとしてひとまずナイキスト周波数の25kHzを通過域としました。

できるだけ出力波形を崩したくないのでベッセル特性を中心にシミュレーションしました。ベッセル特性は過渡特性はいいのですがキレがいまいちなので次数をあげました。回路は多重帰還(MFB)を使いました。

シミュレーション回路図


4次LPF

8次LPF

特性からCRの定数を計算して(文末に記載)シミュレーションしました。

周波数特性


4次バターワース fc=25kHz

4次ベッセル fc=25kHz

8次ベッセル fc=25kHz

ベッセルフィルタの特性グラフ(「OPAMP大全」の<図4-12>ベッセル特性)を見ると、-3dBのカットオフ周波数の2倍の周波数では、次数を4次以上に上げても減衰率が変わっていません。

シミュレーションでも「4次ベッセル fc=25kHz」と「8次ベッセル fc=25kHz」を比較すると、@50kHzではどちらも-16dB付近となっていて@50kHzで十分に減衰されていません。

4次ベッセル fc=20kHz

8次ベッセル fc=20kHz

カットオフ周波数を20kHzとすると@50kHzで、「4次ベッセル fc=20kHz」は-19dB、「8次ベッセル fc=20kHz」では-21dBとなっています。

過渡応答 ノコギリ波@1kHz

普通は矩形波で過渡応答を見ますが、シンセでよく使うノコギリ波でやってみました。

4次バターワース fc=25kHz

4次ベッセル fc=25kHz

8次ベッセル fc=25kHz

4次ベッセル fc=20kHz

8次ベッセル fc=20kHz

「4次バターワース fc=25kHz」は波形の底で振動があらわれていますが、ベッセル特性はおおむね良好で、若干オーバーシュートが出たりなまったりしています。

過渡応答 ノコギリ波@10kHz

10kHzはNucleo DCOで考えている出力周波数の上限あたりです。

4次バターワース fc=25kHz

4次ベッセル fc=25kHz

8次ベッセル fc=25kHz

4次ベッセル fc=20kHz

8次ベッセル fc=20kHz

ノコギリ波@10kHzでも「4次バターワース fc=25kHz」では大きく歪み、ベッセル特性(fc=20kHz)、ベッセル特性(fc=25kHz)の順に波形はきれいになっています。

シンセのオシレーターとして使うことを考えると、後段のVCF/VCAで帯域を削ったり歪ませたりするので、DCOではできるだけキレイな波形を保つために、出力段のLPFはベッセル特性にするのがよさそうです。

どのみちVCFを通すのでDCOの出力段のLPFはバイパスできるようにしておいてもいいかも。

特性の計算


OPアンプ大全」に載っている<表4-2>バターワース設計表から

4次バターワース fc=25kHz
ステージ F0 fc Q
1st 1 25000 0.5412
2nd 1 25000 1.3065

OPアンプ大全」に載っている<表4-8>ベッセル設計表から

4次ベッセル fc=25kHz
ステージ F0 fc Q
1st 1.4192 35480 0.5219
2nd 1.5912 39780 0.8055

4次ベッセル fc=20kHz
ステージ F0 fc Q
1st 1.4192 28384 0.5219
2nd 1.5912 31824 0.8055

8次ベッセル fc=25kHz
ステージ F0 fc Q
1st 1.7838 44595 0.506
2nd 2.1953 54882.5 1.2258
3rd 1.9591 48977.5 0.7109
4th 1.8378 45945 0.5597

8次ベッセル fc=20kHz
ステージ F0 fc Q
1st 1.7838 35676 0.506
2nd 2.1953 43906 1.2258
3rd 1.9591 39182 0.7109
4th 1.8378 36756 0.5597

定数の計算


「OKAWA Electric Design」のオペアンプ多重帰還型ローパス・フィルタ計算ツールを使ってCRの定数を求めました。

C系列: 6
R系列: 12

MFB 4次バターワース特性 fc=25kHz
ステージ R1(kΩ) R2(kΩ) R3(kΩ) C1(uF) C2(pF)
1st 3.9 10 3.9 0.0022 470
2nd 4.7 8.2 4.7 0.0047 220

MFB 4次ベッセル特性 fc=25kHz
ステージ R1(kΩ) R2(kΩ) R3(kΩ) C1(uF) C2(pF)
1st 3.9 12 3.9 0.0015 330
2nd 3.3 8.2 3.3 0.0022 220

MFB 4次ベッセル特性 fc=20kHz
ステージ R1(kΩ) R2(kΩ) R3(kΩ) C1(uF) C2(pF)
1st 4.7 8.2 4.7 0.0015 470
2nd 4.7 12 4.7 0.0022 220

MFB 8次ベッセル特性 fc=25kHz
ステージ R1(kΩ) R2(kΩ) R3(kΩ) C1(uF) C2(pF)
1st 3.9 15 3.9 0.001 220
2nd 3.9 15 3.9 0.0022 68
3rd 3.3 15 3.3 0.0015 150
4th 4.7 12 4.7 0.001 220

MFB 8次ベッセル特性 fc=20kHz

ステージ R1(kΩ) R2(kΩ) R3(kΩ) C1(uF) C2(pF)
1st 3.3 12 3.3 0.0015 330
2nd 4.7 12 4.7 0.0022 100
3rd 4.7 10 4.7 0.0015 220
4th 3.9 8.2 3.9 0.0015 330

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