CoolAudioのV3320Mの動作テストしました。
パッケージは18PinのSOPです。DIP変換基板で18Pinのものがあまり出回っていないので、20Pinのものを使用しました。
実験に使った回路図
V3320のデータシートの回路例はRCネットワークがどうなっているかわかりやすいと思います。ICの端子順がバラバラなので配線には注意が必要。
V3320のデータシートから注意点をまとめます。
VSS(Pin13)の絶対定格は–4~+0.5Vです。IC内部でVSSに-1.9Vのレギュレーターが入っているので-12Vを使う場合はVSSに電流制限抵抗を入れます。
REE = (Vss - 2.7V) / 0.008 = (12 - 2.7) / 0.008 ≒ 1162Ω
実験では回路例と同じ1.5kΩを使いました。
FREQ CV(Pin12)の絶対定格は-6V~+6Vとなっています。FREQ CV(12Pin)の入力は100kΩと1.8kΩの抵抗で分圧されていて0.018倍されるので、それほど気を使う必要はありません。
RESONACE CV(Pin9)の絶対定格は-18V~+2Vとなっています。RESONANCE CV(Pin9)は電流入力であり、100kΩの電圧電流変換抵抗を入れているので+2V以上でも問題ありません。電圧電流変換抵抗により電圧降下します。
ゲインやカットオフ周波数の可変域は、帰還抵抗とコンデンサの値によって決まります(式はデータシートのFunctional Description / 2. Operation of Each Filter stage参照)。回路例から値を変更するとカットオフ周波数がずれます。300pFのコンデンサの手持ちがないので330pFを使用しましたが、誤差10%と考えれば大きな問題ではないと思います。
バッファの出力負荷は、最大推奨DC負荷はソース1mA、シンク250uA、バッファ間負荷差150uA。A.C.負荷の最大推奨値は±250uAとなっています。抵抗の値も回路例どおりにしておくのが無難です。相場感としては、12V / 100kΩ = 120uA、電流は電圧に比例、抵抗に反比例です。
ブレッドボード配線
実験のようす
電源電圧は±12V。
FREQ CVは(固定)抵抗とPOTの分圧で作りました。[33kΩ] - [50kΩ/可変] - [33kΩ]で+12V、-12V間につなぐと-5V~+5Vが得られる計算ですが、Pin12の入力インピーダンスにより-4.12V~+4.15Vまでしか設定できませんでした。
出力波形
1kHz/4Vppの矩形波を入力し、周波数制御電圧(FREQ CV)とレゾナンス制御電圧(RES CV)を変化させてフィルタのステップ応答を観測しました。
FREQ CV=0V RES CV=-2V
FREQ CV=0V RES CV=-1V
RES CVは-1V以下ではレゾナンスの変化なし。
FREQ CV=0V RES CV=0V
RES CV=0Vでは1次LPFのような応答。
FREQ CV=0V RES CV=+1V
FREQ CV=0V RES CV=+2V
FREQ CV=0V RES CV=+3V
FREQ CV=0V RES CV=+4V
RES CVを大きくしていくと振動が増えます。さらに大きくすれば自己発振するかも知れません。
FREQ CV=-4V RES CV=0V
FREQ CV=+4V RES CV=0V
FREQ CVは入力電圧が小さい方がカットオフ周波数が高くなります。
周波数特性
周波数制御電圧(FREQ CV)とレゾナンス制御電圧(RES CV)を変化させてフィルタの周波数特性を測定しました。
FREQ CV=-4V RES CV=0V
FREQ CV=0V RES CV=0V
FREQ CV=0V RES CV=3V
RES CVを高くするとカットオフ周波数のQが上がります。
端子電位
周波数制御電圧(FREQ CV)とレゾナンス制御電圧(RES CV)を入力したときの端子電位を測定しました。
FREQ CV(V) | Pin12(mV) |
---|---|
-4.12 | -72.7 |
0 | 0 |
4.15 | 71.2 |
RES CV(V) | Pin9(mV) |
---|---|
-2 | -1973 |
-1 | -983 |
0 | -127.7 |
1 | 44 |
2 | 114.1 |
3 | 156.4 |
4 | 187.5 |
5 | 212.7 |
参考
V3320の中身は4つの可変ゲインセルとバッファ、指数関数回路なので外付けのRCネットワークによりいろいろなフィルタが作れます。その分使いこなすにはデータシート他資料を読んで理解する必要があります。
動作の詳細やLPF以外にHPF、BPF、All Pass Filterの回路図が載っています。
オリジナルのデータシートも詳細です。状態変数フィルタ(SVF)の回路図もあります。
Sequential Pro-OneやOberheim OB-XaなどのVCFの構成についての記述もあります。
V3320について詳細に分析されています。