エミッタフォロワの発振
前回ブレッドボードで実験をした時、うっかりしてブレッドボード上のGND線を接続していなかった。
ここをつないでおかないと、積セラとアルミ電解コンデンサによるデカップリングがされない。ここを接続すると、AD9833の出力(0.6Vp-p)を直接入力しても発振しなくなった。
ユニバーサル基板で実験
大した手間ではないので、ユニバーサル基板で回路を組んで測定してみた。エミッタ抵抗は470Ωにした。
回路図
基板図
部品面
ハンダ面
入出力波形
シミュレーション回路図
過渡解析
負荷抵抗を1kΩ、470Ω、330Ωにしてパラメータ解析した。1kΩではクリップしないが、470Ωでは約-1.9V、330Ωでは約-1.6Vで波形の下側がクリップしている。
オシロで測定
負荷抵抗1kΩ(実測値993.4Ω)
ch1:入力 ch2:出力
入力は4Vp-p、出力は3.84Vに低下しているが波形は歪んでいない。
負荷抵抗470Ω(実測値467.5Ω)
ch1:入力 ch2:出力
負荷抵抗が470Ωの場合、下側が約-1.8Vでクリップしている。
負荷抵抗330Ω(実測値330.9Ω)
ch1:入力 ch2:出力
負荷抵抗が330Ωの場合、下側が約-1.5Vでクリップしている。
振幅の減衰はシミュレーションには現れていないが、波形のクリップはほぼシミュレーションどおりだと思う。
周波数特性
AC解析
負荷抵抗が1kΩのとき、-3dBのカットオフ周波数は20Hzより少し下あたり。
AD9803ファンクションジェネレータ(Bypass出力)で100kHz~3MHzのサイン波を出力し、入出力のオシロの振幅の表示値を比較してみた。
電源電圧:9V 負荷抵抗1kΩ
グラフは多少ガタガタしているが、3MHzまで出力の減衰は見られない。
測定値
f(kHz) | In(mVp-p) | Out(mVp-p) | A | A(dB) |
---|---|---|---|---|
100 | 544 | 544 | 1 | 0 |
200 | 552 | 528 | 0.956521739 | -0.386103104 |
300 | 544 | 528 | 0.970588235 | -0.259299543 |
500 | 544 | 512 | 0.941176471 | -0.526578774 |
600 | 544 | 520 | 0.955882353 | -0.391911121 |
700 | 544 | 512 | 0.941176471 | -0.526578774 |
800 | 528 | 512 | 0.96969697 | -0.267279231 |
900 | 528 | 504 | 0.954545455 | -0.404067722 |
1000 | 512 | 488 | 0.953125 | -0.417002779 |
2000 | 416 | 400 | 0.961538462 | -0.340666786 |
3000 | 320 | 312 | 0.975 | -0.219907686 |
低域はWaveGeneとWaveSpectraで周波数特性を測定した。
電源電圧:9V 負荷抵抗1kΩ
WaveSpectraのFFTの設定は、サンプルデータ数:32768、窓関数:なし(矩形)
オーディオ・インターフェイスの入力モードはGuitarモード(1MΩ)
ループバック
エミッタフォロワの出力
ループバックと比較して、エミッタフォロワ回路を通すと20Hzあたりでおおよそ-3dBになっている。
10kHz以上の減衰はLoopBackでも出ていて、これはエミッタフォロワ回路での減衰ではなく、測定に使っているオーディオ・インターフェイス(TASCAM US-144 MKII)の特性。
ステップ応答
矩形波だけのファンクションジェネレータで100kHz/1Vp-pの矩形波を出力して、ステップ応答を測定してみた。
ch1:入力 ch2:出力
立ち上がり/立ち上がりとも20ns未満で、遅れは殆ど見られない。エミッタ接地回路と比べるとかなり速い応答だ。
出力の線が太くなっているので拡大してみると
ch1:入力 ch2:出力
立ち上がりの振動が見られる。平坦な部分の振動も入力より大きくなっている。なんでかはわかりません(^q^;
歪率
PCM5102Aファンクションジェネレータで1kHz/1Vp-pのサイン波を出力して、WaveSpectraで測定してみた。
入力
出力
THDの表示値は0.027%から0.070%に増加。エミッタ接地回路の時と同じような値だが、エミッタ接地回路で出ていた4次高調波歪はあまり出ていない。
まとめてきな
実験してみて、エミッタフォロワが発振しやすいというのはホントだと思った。エミッタフォロワの場合、デカップリング・コンデンサは必須。
高周波数の特性は良いが、ACカップリングによる低域の減衰は気をつけないといけない。30Ωのヘッドホンをつなぐとすると、265uFで-3dBのカットオフ周波数が20Hz程度になる。
負荷が重い時に振幅が大きい信号でもクリップしないようにするには、エミッタ抵抗の値を下げてアイドル時の電流を多く流す必要がある。これはバッテリー駆動で使おうと思うとなかなか厳しい要件だと思う。
エミッタフォロワの振幅の減衰はLTSpiceではシミュレーションできない。(なんかすればシミュレーションできると思うが)
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