2017年10月8日日曜日

Tr回路の実験 エミッタ接地回路 その2

エミッタ接地回路をLTSpiceでシミュレーションしたものと、ブレッドボードで組んだ回路の測定結果を比較してみようと思います。

回路図

R4(コレクタ抵抗)を6kΩとして、増幅率は約3倍に固定した。

また、負荷抵抗としてRL(100kΩ)を入れた。無負荷だとオシロのプローブ(10MΩ)を当てたぐらいではC2から電荷が抜けず、出力のGNDレベルがなかなか落ち着かない。

ブレッドボード配線図


6kΩのコレクタ抵抗は12kΩを2本並列にして作った。

電源電圧:9.02V (電流/電圧計付可変両電源

各ポイントの波形


入出力:シミュレーション

入出力:実験

ch1:In ch2:Out

0.6Vp-pの入力に対して、1.6Vp-pの位相が反転した波形が出力されている。R4/R3=3だが、シミュレーションと実験結果とも、1.6V/0.6V≒2.7程度になっている。

ベース電位:シミュレーション

ベース電位:実験

ch1:In ch2:Vb

ベース電位Vbはバイアスポイントの約2.5Vを中心に0.6Vp-pの振幅で振れている。

エミッタ電位:シミュレーション

エミッタ電位:実験

ch1:Vb ch2:Ve

オシロのの表示地の[V]は平均値で2.440V - 1.798V = 0.642Vで、エミッタ電位Veは、ベース電位VbよりVbe分低い振幅。

実験で使った2SC1815をAVRトランジスターテスターで測定すると
B=164
Vf=698mV
だった。

コレクタ電位:シミュレーション

コレクタ電位:実験

ch1:Ve ch2:Vc

コレクタ電位Vcはエミッタ電位Veの波形と位相が反転して、振幅は出力とほぼ同じ約1.6Vとなっている。平均値は3.653Vでコレクタの動作点はシミュレーションとほぼ合致している。

増幅率を単純にRc/Reで計算して比べると、シミュレーションとは約10%の誤差があったが、シミュレーション結果と実験結果はほぼ合致していて、各部の電位もほぼシミュレーションどおりと言っていいと思う。

ディスクリート回路だとさすがにSpiceすごい(^q^!

周波数特性


エミッタ接地回路は入力インピーダンスが(比較的)高く、電圧増幅できるがミラー効果によって周波数特性があまりよくない。どれぐらいよくないかもシミュレーションと実験で比べてみた。

シミュレーション(AC解析)

ちゃんと増幅できている部分は8.5dB程度で、-3dBの5.5dB程度になるポイントは7MHz付近になっている。

実験はAD9833ファンクションジェネレーターで周波数を変えつつサイン波を出力して、オシロの表示値で振幅(Vp-p)を測定した。

AD9833ファンクションジェネレーターはアンプ部をバイパスしてモジュールからの出力をそのまま使った。AD9833の出力は高周波数になると振幅が小さくなり、1MHz以上になると波形もあやしくなるので、エミッタ接地回路の入力と出力の振幅を測定してその比を比べてみた。

測定データ

f(kHz) In(mVp-p) Out(mVp-p) A A(dB)
100 600 1600 2.666666667 8.519374645
200 592 1560 2.635135135 8.416057833
300 584 1520 2.602739726 8.308614817
500 576 1400 2.430555556 7.714111045
600 568 1320 2.323943662 7.32451191
700 560 1240 2.214285714 6.904673163
800 552 1160 2.101449275 6.45037823
900 536 1120 2.089552239 6.40106466
1000 536 1040 1.940298507 5.757370992
2000 448 540 1.205357143 1.622314916
3000 376 340 0.904255319 -0.874178558


100kHzでは約8.5dBの増幅で、-3dBのポイントは1MHz付近となっていてシミュレーションより悪い結果となった。

グラフの900kHzあたりがガタガタしているのは、この辺になるとAD9833の波形が乱れてくるのでその影響の測定誤差だと思う。

ステップ応答


自作の矩形波だけのファンクションジェネレーターで1Vp-p/100kHzの矩形波を出力して、ステップ応答を見てみた。


ch1:In ch2:Out

Rise Time、Fall Timeとも40nsで、約3V上昇するのに40nsかかっているので、単純計算すると75V/usとなる。←こういう計算をしていいのかどうかはわかりません(^q^;

<追記:2017.10.17>

オシロの表示値のRise Timeはch1(入力)のもので、ch2を見なければダメでした。1us/divなので約3V上昇するのに0.5us程度かかっています。

上記のあやしい計算をすると6V/usとなり、速めのOPAMPぐらいの数値になります。←NJM4580のスルーレートの仕様値は5V/us。

</追記>

出力にオーバーシュート、アンダーシュートがでているが、入力のオーバーシュート、アンダーシュートが影響しているのかも?

歪率


WaveSpectraで歪率を測定してみた。

3倍増幅のままだとオーディオ・インターフェイスの入力段が測定値に影響するので、コレクタ抵抗を2kΩとして入力と出力の振幅が同じになるようにして測定した。(エミッタ接地回路で電圧増幅しないのはほとんど意味がないですが)

信号源はPCM5102Aファンクションジェネレータを使って1kHz/1Vp-pのサイン波を出力。

オーディオ・インターフェイスの入力はGuitarモード(入力インピーダンス1MΩ)


ch1:In ch2:Out

出力のほうが若干振幅が低下しているが、厳密に合わせるのは大変なのでまあだいたいということで。

エミッタ接地回路(1倍増幅)への入力

エミッタ接地回路(1倍増幅)への入力

THD(全高調波歪)は約0.022%から約0.055%に増加。スペクトルを見ると2次、3次とも5dB程度増加、4次がはっきり出てきている。

60Hz付近はブレッドボードボードで実験しているので、環境ノイズを拾っているんだと思う。

42kHzあたりにピークが出ているが、これは原因不明。なんでしょうね?

メモ:


矩形波だけのファンクション・ジェネレーターの出力は振動がでてしまうので、これを低減するために相手側の入力インピーダンスにあわせて出力インピーダンスを調整できるようにする手もあるのかなあ?

具体的には出力に可変抵抗を入れて反射波を抑える。

0 件のコメント:

コメントを投稿